仁井谷正充

仁井谷正充とは

仁井谷 正充（にいたに まさみつ）は、1950年2月10日に広島県三原市に生まれた、日本のゲームクリエイターであり実業家です。ペンネームである「MOO仁井谷」の「MOO」は、仏教の「諸行無常」の「無」に由来すると本人は語っています。ゲームメーカーである株式会社コンパイルの創業者として、代表取締役社長を務めたほか、有限会社アイキやコンパイル丸株式会社の代表も歴任しています。特に落ち物パズルゲームの金字塔『ぷよぷよ』シリーズの開発者として、その名を知られています。

経歴とコンパイルの設立

地元の小中学校、高校を卒業後、広島大学理学部に進学しましたが、7年間在籍した後の1975年に中退しました。大学時代は学生運動に深く関わっていました。卒業後は学習塾の経営や広島電鉄の車掌など、様々な職業を経験しました。そして1982年、広島市南区に株式会社コンパイルを設立し、自身のキャリアをスタートさせました。当初は一人でパソコンのシステムソフトウェア開発を手がけていましたが、設立から二年目には大手ゲーム会社セガからのOEM受託業務を獲得するなど、事業を拡大していきます。

『ぷよぷよ』の成功と名物社長

コンパイル設立初期には、初めて開発したゲーム用ソフト『N-SUB』が高い評価を得たのを皮切りに、ビリヤードゲーム『ルナーボール』など、次々とヒット作を生み出しました。そして、創業から9年が経った1991年に開発された『ぷよぷよ』が、後に社会現象を巻き起こすほどの大ヒット作となります。この成功に伴い、仁井谷氏自身もメディアやイベントに積極的に登場するようになります。自らぷよぷよの模様をあしらったコスプレ衣装を着用するなど、そのユニークで個性的な振る舞いは大きな話題を呼び、「ゲーム業界の名物社長」としての地位を確立しました。1996年には写真週刊誌に「アルプスの少女」姿で営業を行う写真が掲載されるなど、その存在感は業界内外に広く知られるようになりました。

経営の失敗と二度の倒産

『ぷよぷよ』の大成功の陰で、コンパイルは次なるヒット作を生み出せない状況に直面しました。また、鳴り物入りで市場に投入されたグループウェア製品『パワーアクティ』の販売不振も経営を圧迫します。さらに、千葉県の海浜幕張地区に「ぷよぷよランド」というテーマパーク構想を打ち出すなど、過度な事業拡大路線を進めた結果、社員の大量採用による人件費の増加、不動産への投資負担、巨額の宣伝費投入といった経営判断の誤りが、コンパイルの財政を深刻な危機に陥れました。最終的に、同社は1998年に約75億円もの負債を抱え、倒産（和議申請）する事態となりました。その後も経営再建は叶わず、2002年には二度目の倒産（破産宣告）を受け、コンパイルは解散。仁井谷氏自身も、約90億円という巨額の個人負債を抱え、自己破産に至るという苦難を経験しました。

倒産後の模索と再起への道

会社の経営破綻という困難な状況の中、仁井谷氏は話題を提供し続けました。倒産を題材にした楽曲『傷心〜きずごころ』でCDデビューを果たし、注目を集めました。コンパイル解散後、2002年には有限会社アイキの代表取締役社長に就任しましたが、2005年にはゲームコンテンツの知的財産権を他社に譲渡。アイキも2006年に破産手続きを開始し、翌年には破産廃止となりました。また、デジタルエンタテインメントアカデミーや代々木アニメーション学院で講師を務めた時期もありましたが、これらも長くは続きませんでした。2006年には旧コンパイルの関係者が設立したコンパイルハートにおいて、新作ゲームの開発監修に関わる話がありましたが、これも短期間で関係が解消されました。

一時期はゲーム業界の表舞台から遠ざかっていた仁井谷氏でしたが、2011年頃からTwitterでの活動を再開し、かつてのファンとの交流を深めるなど、再び公の場に姿を見せるようになります。ネットテレビ番組や地上波テレビ番組への出演も増え、2015年にテレビ東京の番組に出演した際には、千葉県内のアパートでアルバイトをしながら、Nintendo 3DS向けの新作ゲーム『にょきにょき たびだち編』を単独で開発している現状を赤裸々に語り、視聴者の関心を集めました。2016年にはこの新作ゲームを世に送り出すため、自ら「コンパイル丸株式会社」を設立し、代表取締役社長に就任。同年にはゲームイベント「BitSummit」に出展し、開発中の『にょきにょき』をお披露目しました。そして2016年11月には、長年の開発を経て『にょきにょき たびだち編』の配信が開始されました。さらに、このゲームのプロモーションを兼ねて、広報担当のアイドルと共に漫才コンビ「たにんどん」を結成。お笑いの祭典「M-1グランプリ2017」に出場し、「ナイスアマチュア賞」を受賞するなど、話題に事欠かない活動を続けています。その再起への道のりは、テレビ番組でも特集され、多くの人々にその不屈の精神を知らしめました。

その他の活動

仁井谷氏はゲーム開発や経営だけでなく、様々な表現活動を行っています。コンパイルのゲーム作品においては、声優として『ぷよぷよ通』のカーバンクルや『ぷよぷよSUN』のサタンなど、印象的なキャラクターを演じました。また、『す〜ぱ〜なぞぷよ通』や『戦え!!北出マン』といった自社ゲームには、隠しキャラクターや作中会社の社長として「MOO仁井谷」という自身のキャラクターが登場しています。音楽活動にも熱心で、1999年にはシングルCD『傷心〜きずごころ』でメジャーデビューを果たしました。この楽曲は元々開発中止となったゲームの主題歌でしたが、後に他の自社ゲームでBGMとして使用されました。また、コンパイル関連の音楽CDにも、ボーカルやトークで参加しており、その多才ぶりを発揮しています。

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