仁別森林鉄道

仁別森林鉄道は、かつて秋田市北東部に路線網を持っていた森林鉄道です。秋田営林局（現在の東北森林管理局）が運営し、木材の搬出を主な目的としていました。国鉄秋田駅東側に隣接する場所にターミナルと貯木場があり、そこから雄物川支流である旭川の谷に沿って路線が敷設されていました。

路線

軌間はすべて762mmで、以下のような路線がありました。路線長は、開設当初の長さを記載しています。

仁別林道：秋田貯木場から仁別事業区17林班吐出沢まで21,432mの路線で、本線格でした。途中には、松原駅、仁別駅、務沢駅があり、沿線住民の利便性のために仁別駅までは客車が連結されていました。
仁別林道中ノ沢支線：仁別林道から妙見付近で分岐し、仁別事業区39林班まで4,918mの路線です。
仁別林道砥沢支線：仁別林道から中ノ沢支線分岐点より1.5km地点で分岐し、仁別事業区33林班まで3,302mの路線です。
仁別林道軽井沢支線：仁別林道から軽井沢口で分岐し、仁別事業区1林班まで2,000mの路線です。
仁別林道旭又沢支線：仁別林道22.4km地点から分岐し、1,340mの路線です。終点付近には約500mのインクライン区間が存在しました。
務沢林道：仁別林道19km地点から仁別山研修所まで380mの短い路線でした。
奥馬場目林道：仁別林道中ノ沢支線から馬場目村銀ノ沢入口まで5,200m（10,538m説もあり）の路線です。峠越えの区間には約550mの馬場目隧道がありました。杉沢森林鉄道の開設に伴い廃止されました。

これらの路線は、延長や廃止が繰り返され、その都度変化していました。

代替バス

仁別森林鉄道の廃止後、以下のバス路線が運行されています。

秋田中央交通仁別リゾート公園線：1時間に1本程度の運行頻度で、客車併結区間をカバーしています。
秋田中央交通秋田温泉線：1時間に2本程度の運行頻度で、仁別リゾート公園線と完全に重複しています。

かつては、秋田市交通局が務沢駅跡に近い仁別森林博物館まで行く「仁別国民の森線」を運行していた時期もありました。

歴史

仁別森林鉄道は、以下のような歴史を辿っています。

1908年（明治41年）：建設開始
1909年（明治42年）：秋田貯木場竣工、仁別林道本線（21,432m）開設
1916年（大正5年）：中ノ沢支線（4,918m）開設
1926年（昭和元年）：ホイットコム製ガソリン機関車導入
1928年（昭和3年）：砥沢支線（3,302m）開設
1933年（昭和8年）10月：奥馬場目林道の馬場目隧道工事着工
1935年（昭和10年）：奥馬場目林道を自動車道から変更開通（5,200m）
1936年（昭和11年）：奥馬場目林道の馬場目隧道竣工、軽井沢支線（2,000m）開設
1940年（昭和15年）：奥馬場目林道を3,640m延長（8,840m）
1943年（昭和18年）：本線を14林班まで1,888m延長（23,320m）
1948年（昭和23年）：砥沢支線を廃止、歩道に編入
1949年（昭和24年）：中ノ沢支線を750m延長（5,668m）、奥馬場目林道を全線牛馬道に格下げ（翌年、一部が杉沢林道に転用、1962年8月18日に廃道）
1950年（昭和25年）：旭又沢支線（1,340m）開設
1952年（昭和27年）：砥沢支線を中ノ沢支線砥沢分線として再開（3,360m）
1953年（昭和28年）12月17日：軽井沢支線を全線牛馬道に格下げ
1956年（昭和31年）：軽井沢支線を再開（1,960m）
1958年（昭和33年）3月：務沢駅付近に仁別山職員研修所を開設
1959年（昭和34年）：全車ディーゼル機関車化、務沢林道（380m）開設
1964年（昭和39年）12月21日：仁別森林博物館開館
1965年（昭和40年）：仁別山研修所を廃止、砥沢支線・旭又沢支線・中ノ沢支線を全線廃道
1966年（昭和41年）：本線を1,000m廃道（22,320m）、軽井沢支線・務沢林道を全線廃道
1968年（昭和43年）：本線を20,820m廃道（1,500m）、本線を全線廃道、旭川治水ダムの建設工事開始

車両

1965年当時の車両は以下の通りです。

機関車：5両（酒井工作所製5トン2両、酒井工作所製4.8トン2両、加藤製作所製5トン1両）
客車：21両（鋼製3両、大型木製1両、小型木製7両、幌形10両）
モーターカー：1両
運材台車：234両（鋼製196両、木製38両）

他に協三工業製の機関車2両が存在していました。仁別森林博物館に展示されている機関車は、当軌道で使用されたものではありません。

廃止後の跡地利用

本線は廃止後、秋田県道401号雄和仁別自転車道線（仁別サイクリングロード）や生活道路に転用されました。秋田高校正門下の一段低くなっている道などが廃線跡です。しかし、旭川ダム建設や仁別リゾート公園造成などにより一部路盤が失われています。また、現存する区間も手入れが行き届いていない箇所が多く、特に旭川ダムより奥では土砂災害により長期間通行止めになることがあります。

山間部の支線は、自動車道として別途建設された仁別林道や、太平山の登山道に転用されました。旧路盤とは別に現道が建設された区間も多く、橋脚や擁壁の痕跡が残されています。旭又沢支線のインクライン区間には枕木がそのまま残され、階段のように利用されています。奥馬場目隧道は埋め戻されており、現道の中ノ沢林道が山越えをする脇に痕跡が見られます。

秋田駅隣接地の貯木場跡は、長年更地のまま放置されていましたが、秋田駅東口の再開発に伴い、2003年以降に区画整理され、マンションや戸建住宅地、駐車場、道路になりました。

脚注

出典

参考文献

西裕之『全国森林鉄道未知なる“森”の軌道をもとめて』JTBキャンブックス、2001年。ISBN 4-533-03979-0。
今井啓輔『私が見た特殊狭軌鉄道』 1巻、レイルロード、2011年。ISBN 978-4947714237。
(財)日本森林林業振興会秋田支部・青森支部編『近代化遺産国有林森林鉄道全データ東北編』秋田魁新報社、2012年6月。ISBN 978-4-87020-325-9。

外部リンク

* 東北森林管理局/仁別森林鉄道歴史写真掲載

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