今井林太郎

今井林太郎：日本の歴史研究に貢献した学者

今井林太郎（1910年1月13日-2003年9月8日）は、日本の歴史学者であり、神戸大学と大手前大学の名誉教授です。専門は日本古代・中世史で、特に荘園制に関する研究で知られています。

教育と研究の歩み

大阪府に生まれた今井氏は、大阪府立今宮中学校を経て、1928年に第三高等学校文科に入学します。同校で中村直勝の講義を受けたことがきっかけで、日本史を専攻することを決意しました。1931年には第三高等学校を卒業し、東京帝国大学に進学。平泉澄の指導を受けました。同期には、北山茂夫、久保田収、箭内健次といった後進を育成する歴史学者たちがいました。

卒業論文では「中世における荘民について」をテーマに研究を行いました。黒板勝美教授からは当初、実現困難なテーマだと助言を受けましたが、清水三男の研究を参考に論文を完成させました。1934年に東京帝国大学文学部国史学科を卒業後、法政大学講師を経て、1944年に神戸経済大学予科教授、1949年には神戸大学教授に就任しました。1973年に神戸大学を定年退官し名誉教授となりました。同年、大手前女子大学教授に就任しました。2003年9月8日、老衰のため93歳で亡くなりました。

業績

今井氏の研究は、主に日本の中世社会、特に荘園制に焦点を当てています。彼の代表的な著作である『日本荘園制論』（三笠書房、1939年）は、この分野における重要な貢献として高く評価されています。この他にも、人物評伝として『石田三成』（吉川弘文館、1961年）、『織田信長』（筑摩書房、1966年）などを著し、幅広い歴史研究成果を残しました。さらに、阿部真琴、井上薫らとの共編著として『大学日本史』（吉川弘文館、1954-1955年）、『新編日本史年表』（吉川弘文館、1958年）など、多くの歴史教科書や参考書の編纂にも携わっています。

彼の研究は、一次史料を丁寧に分析し、緻密な論証を展開することで知られています。特に農民の生活や社会構造に関する研究は、従来の歴史像を覆すものであり、現代の歴史研究にも大きな影響を与えています。また、後進の育成にも尽力し、多くの歴史家を輩出しました。

参考文献

今井林太郎の研究活動を知る上で重要な参考文献として、以下のものが挙げられます。

今井林太郎「清水三男氏追悼記念講演 中世の農民―日本農民史第三講」『日本史研究』第12号、日本史研究会、1950年
今井林太郎「歴史と私」『歴史手帖』第19巻第3号、名著出版、1991年
「各大學史學科卒業論文題目（一）」『歴史地理』第63巻第3号、地人書館、1934年
「今井林太郎先生略年譜・著作目録」『兵庫史学』第63号、兵庫史学会、1974年

これらの文献を通して、今井林太郎の学問的業績と、その生涯をより深く理解することができます。彼の研究は、日本の歴史研究に大きな足跡を残し、これからも多くの研究者たちに影響を与え続けるでしょう。

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