今井邦子

今井邦子について

今井邦子（いまい くにこ、1890年5月31日 - 1948年7月15日）は、徳島市で生まれたアララギの歌人であり小説家です。本名はくにえ、旧姓は山田です。彼女は、短歌誌「明日香」を創刊したことで知られており、また新聞記者としても活動しました。夫は衆議院議員の今井健彦で、通産省事務次官である両角良彦は甥にあたります。

生い立ち

明治23年、今井邦子は父山田邦彦（官吏、和歌の詠者）のもとに生まれました。彼女が2歳の時、両親が離婚し、長野県下諏訪町の祖父母に預けられました。文才に恵まれた彼女は、若い頃から「女子文壇」への詩の投稿を通じて、多くの入賞を果たしていました。この時期、教会に通いキリスト教を学ぶことで、西洋文化に接し、さらなる創作意欲を掻き立てられました。

文学の思いとその葛藤

諏訪高等女学校で学びつつ、老いた祖母を看病しましたが、彼女は親に決められた結婚を機に家出を決行しました。新体詩の選者・河井酔茗に師事することで、彼女の文学世界が広がっていきました。しかし、父が危篤状態になり、一時帰郷しましたが、その後再び上京し、中央新聞社の婦人記者に就職します。独自の作風が次第に確立される中、結婚後の生活や育児に押しつぶされそうになり、さらには夫の不貞を知って三度の家出を経験しました。苦しい修行生活を経て、再び家庭に戻ることとなりました。

島木赤彦との関係

大正元年になると、歌文集「姿見日記」を発表します。その後、アララギに参加し、帰郷の先輩である島木赤彦から多くを学びました。赤彦に師事することで、彼女はかつての自由で情熱的な作品から、心情を抑えた写実的な作風へと変化していきました。赤彦が亡くなった後も、斎藤茂吉からの影響を受けて研鑽を続けました。

"明日香"の創設

昭和11年、邦子は「アララギ」を退会し、女性だけの短歌雑誌「明日香」を創刊しました。彼女は多くの女流作家や歌人を育て、昭和の代表的な女流歌人の一人として広く認知されるようになりました。明日香の運営には、娘の節子や姪の岩波香代子が協力し、大いに貢献しました。

彼女の業績

邦子は、古典文学の研究や評論、随筆、研究書など多くの著作を残しました。彼女の一生は充実したものであり、1948年に長野県の疎開先で心臓麻痺により59歳でこの世を去りました。彼女は妻、母、歌人として、また一人の女性として激しい葛藤の中で生きた、美貌と強さを併せ持つ歌人でした。今井家の菩提寺である小石川・寂円寺に埋葬され、のちに静岡県の富士霊園に移葬されました。

代表的な作品

邦子が残した歌集は、個性的な表現が多く含まれています。代表的な作品には、歌文集「姿見日記」や「片々」、また「光を慕ひつつ」や「紫草」などがあります。]

顕彰施設

現在、長野県下諏訪町には今井邦子文学館が設立されており、彼女の業績や作品が広く紹介されています。

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