今川範叙

今川範叙の生涯

今川範叙（いまがわ のりのぶ）は、江戸時代の高家旗本として知られています。彼は今川義順の三男で、明治維新後には得多郎と名乗りました。範叙の母は松浦静山の娘であり、彼は今川家の23代目の当主でした。

範叙は1841年に父の死去に伴い家督を継承しました。1849年には将軍家慶に初めてお目にかかり、その後、1850年には高家職に就任しました。高家としては、伊勢神宮や日光東照宮の代参を務めるなど、重要な役割を果たしました。しかし、江戸の動乱が迫る中での安政元年には、御所の火災見舞いのために京都に赴いています。

幕末の動乱の中、範叙は若年寄に就任する異例の経歴を持っていますが、その地位は時代の変化とともに次第に難しくなりました。新政府が江戸に進軍する中、彼は伝統的に朝廷に対する交渉を担う高家からの登用がなされました。しかし、1868年に幕府が終焉を迎えると、彼もまた若年寄を解任されることになります。

維新後の選択

明治維新後、範叙は新政府に帰順する道を選びました。1869年には中大夫として新たな身分を与えられ、旧幕臣としての役割を果たしました。また、同年には屋敷を上知されるなどの改革が行われましたが、それに伴う知行権の廃止により、彼は家臣たちとの関係を断たざるを得ませんでした。

さらに、範叙の私生活においても波乱が待ち受けていました。安政2年には結婚しましたが、妻は1869年に死去し、嫡子である淑人も1872年に若くして亡くなるなど、厳しい運命に見舞われていました。彼は通称を「得多郎」と改め、再出発を図ることとなります。

最後の日々

1874年には観泉寺の住職が彼の困窮を見かねて募金を行うなど、周囲からの支援もありましたが、範叙の経済的な状況は改善されることなく、1887年に没するまでの晩年は多くの試練にさらされました。彼の家族は、長女が他家に嫁いだことから、今川氏の直系は絶えてしまいました。

範叙の死後、彼の名を刻んだ扁額が静岡の臨済寺に残されており、彼の存在は多くの人々の記憶に残っています。彼の生涯は、幕末から明治にかけての tumultuousな時代背景を象徴するものであり、多くの家族の物語が交錯しています。今川範叙の歩みを通じて、日本の歴史における高家旗本の役割や、その時代の社会の変化を深く学ぶことができます。

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