今川裕代

今川裕代（Hiroyo Imagawa）

福井県三方上中郡若狭町に生まれた今川裕代は、国際的に活躍する日本の女性ピアニストです。

学びと初期のキャリア

今川氏は、シュトゥットガルト音楽演劇大学およびザルツブルク・モーツァルテウム大学修士課程を首席で卒業しました。在学中からヨーロッパ各地で演奏活動を開始し、その卓越した技術と深い表現力は高く評価されました。特に、多彩な音色、繊細な叙情性、そして洗練された音楽性は多くの聴衆を魅了し、演奏家としての地歩を確固たるものとしていきました。

ピアノ演奏においては、故ハンス・ライグラフ、アンドレ・マルシャン、角聖子、高務智子、徳岡美智子、田邉暁美といった国内外の著名な師事者に学びました。また、楽曲分析を徳岡正之氏に、室内楽を故ウィルヘルム・メルヒャー（メロス弦楽四重奏団）、ギュンター・ピヒラー（アルバン・ベルク弦楽四重奏団）、ライナー・シュミット（ハーゲン弦楽四重奏団）に師事するなど、幅広い音楽的視野を培っています。

国際的な活動と共演

今川氏は、これまでに国内外の数多くの著名なオーケストラと共演しています。日本国内ではNHK交響楽団、東京フィルハーモニー交響楽団、新日本フィルハーモニー交響楽団、名古屋フィルハーモニー交響楽団、関西フィルハーモニー管弦楽団など、主要なオーケストラとの共演実績を重ねています。海外においては、チェコ国立ブルノフィルハーモニー管弦楽団、ドルトムント・フィルハーモニー管弦楽団、ベネズエラ交響楽団、アルメニア・フィルハーモニー管弦楽団など、国際的な舞台でも精力的に活動を展開しています。

共演した指揮者も多岐にわたり、飯森範親氏、井上道義氏、大友直人氏、小林研一郎氏、沼尻竜典氏といった日本を代表する指揮者から、クリスティアン・アルミンク氏、ペトル・アルトリヒテル氏、エドゥアルド・トプチャン氏など海外の指揮者まで、多くの名指揮者と共に音楽を創り上げてきました。

幅広い演奏活動と特筆すべき実績

今川氏の演奏活動は、コンサートホールでの公演に留まりません。イギリスの宮殿内での御前演奏という類稀な経験を持つほか、ベルギーのフランドロン音楽祭、ドイツのシュベッツィンゲン音楽祭、モーゼル音楽祭、マイセン音楽祭、メクレンブルク＝フォアポメルン音楽祭といったヨーロッパ各地の国際音楽祭に招聘されています。日本国内でも、武生国際音楽祭や越のルビー音楽祭といった著名な音楽祭、ラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポンなどにも出演し、活躍の場を広げています。また、NHKやドイツのMDR、SWRといった主要な放送局のラジオ番組にも出演し、幅広い層にその演奏を届けています。

特定の期間においても精力的な活動が見られます。例えば、2014年と2015年には、モーツァルト、ベートーヴェン、ブラームス、ラフマニノフといった作曲家の主要なピアノ協奏曲をオーケストラと共演したほか、東京文化会館や石川県立音楽堂などでソロリサイタルを開催しました。さらに、新国立劇場主催公演でのトップダンサーとの共演や、著名アーティストとの室内楽公演にも多数参加するなど、クラシック音楽の枠にとらわれない多様な表現活動を行っています。

ザルツブルクでの定期的な公演に加え、地域社会への貢献を目指すアウトリーチ活動にも積極的に取り組んでいます。また、クラシック音楽と現代のビジネスを結びつける新たな試み（ヤナセやメルセデス・ベンツ主催コンサートなど）も好評を博しており、その柔らかな語り口で音楽の魅力を深く伝える姿勢は、多くの人々の共感を集めています。

コンクール受賞歴

数々の国際コンクールで優秀な成績を収めています。

2002年 第9回 ヨハネス・ブラームス国際コンクール 第2位
2002年 オーストリア政府よりヴュルディグング賞
2002年 第25回 サレルノ国際ピアノコンクール 第1位、併せて最優秀ドビュッシー演奏賞
2003年 第1回 アントン・ルビンシュタイン国際ピアノコンクール 第3位
2005年 第10回 シューベルト国際ピアノコンクール 第2位

教育者としての活動

演奏家としての活動と並行して、後進の育成にも力を注いでいます。2015年4月には大阪芸術大学演奏学科の客員准教授に就任し、2017年4月からは同大学の准教授を務めました。また、東京音楽大学指揮科の特別アドヴァイザーとしても指導に関わっています。2024年4月からは大阪芸術大学演奏学科の教授に就任し、さらなる教育への貢献が期待されています。

ディスコグラフィー

これまでに複数のアルバムやDVDをリリースしています。

「Anton G. Rubinstein 2003, Internationaler Klavierwettbewerb」：アントン・ルビンシュタイン国際ピアノコンクールのファイナルにおけるライブ録音。
「Master Teacher Hans Leygraf’s Fundamental Lessons」：師であるハンス・ライグラフ氏のピアノレッスンの基礎を収めたDVD（2008年）。
「Mondshein モントシャイン～月光」：吉川洋一郎氏プロデュースによるプレデビューアルバム（2009年）。柔らかな音色と清らかなリリシズムが特徴的な名曲集。
「L'Isle joyeuse 喜びの島」：同じく吉川洋一郎氏プロデュースによる、ドビュッシーのピアノソロ作品集（2010年）。
その他、ソプラノ歌手 広瀬奈緒氏のアルバム「空の記憶 水の記憶」（2014年）や、村井香子氏のイギリス歌曲集「Fairest isle 美しき島」（2015年）に共演ピアニストとして参加しています。

今川裕代氏は、その確かな技術と豊かな音楽性、そして多様な活動を通じて、クラシック音楽の世界において重要な存在感を示しています。教育者としても次世代の育成に貢献しており、今後のさらなる活躍が期待されています。

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