今村文彦

今村文彦：津波研究と防災の第一人者

今村文彦氏は、1961年生まれの日本の地震学者であり、東北大学災害科学国際研究所の教授として、津波工学、津波防災に関する広範な研究を牽引しています。また、同研究所の所長も務め、災害科学研究の発展に大きく貢献しました。現在は、復興庁復興推進委員会の委員長、土木学会の副会長などの要職も担い、研究活動だけでなく、社会実装にも力を入れています。

研究分野

今村氏の研究分野は多岐にわたります。主なものとしては、以下のようなものが挙げられます。

津波工学: 津波の流体波動数値計算、津波の遡上や構造物への影響評価など、津波のメカニズムを解明するための研究を行っています。
歴史地震津波痕跡調査: 過去の津波の痕跡を調査することで、津波の規模や発生頻度を把握し、将来の津波災害予測に役立てる研究をしています。
避難シミュレーション: 津波発生時の人々の避難行動をシミュレーションすることで、より効果的な避難計画の策定に貢献しています。
認知心理学: 避難時の記憶や人間の行動を分析し、防災教育や啓発活動に役立てています。

生い立ちと研究への道

山梨県で生まれ育った今村氏は、1983年の日本海中部地震をきっかけに津波防災研究に関心を抱き、この分野に進むことを決意しました。東北大学工学部土木工学科、同大学院工学研究科博士後期課程を修了後、同大学の助手、助教授、教授を歴任し、津波研究の第一人者として活躍しています。

東電福島事故に関する証言

今村氏は、東電福島事故の群馬訴訟控訴審において、東京電力側の証人として出廷し、2002年の土木学会の手法では福島沖での将来津波の詳細な検討がなされていないことを証言しました。この証言は、事故原因の究明と今後の防災対策を考える上で重要な意味を持ちました。

主な略歴

今村氏の主な略歴は以下の通りです。

1980年3月: 山梨県立甲府第一高等学校卒業
1984年3月: 東北大学工学部土木工学科卒業
1989年3月: 東北大学大学院工学研究科博士後期課程修了
1989年4月: 東北大学助手
1992年12月: 東北大学工学部助教授
1993年8月: アジア工科大学院土木工学部助教授
1997年6月: 京都大学防災研究所客員助教授
2000年4月: 海洋科学技術センター客員研究員
2000年8月: 東北大学大学院工学研究科教授
2008年4月: 日本自然災害学会会長
2012年4月: 東北大学災害科学国際研究所教授
2014年4月: 東北大学災害科学国際研究所所長
2023年3月: 東北大学災害科学国際研究所所長任期満了退任
2023年6月: 土木学会副会長（企画、国際担当）

受賞歴

今村氏の研究業績と社会貢献は高く評価されており、数多くの賞を受賞しています。

2013年9月: 防災功労者防災担当大臣表彰
2014年3月: NHK放送文化賞
2015年4月: 文部科学大臣表彰科学技術賞（科学技術振興部門）
2015年6月: 国土地理院功労者表彰
2016年9月: 防災功労者内閣総理大臣表彰
2020年11月: 濱口梧陵国際賞（国土交通大臣賞）
2021年4月: 文部科学大臣表彰科学技術賞（科学技術振興部門）

主要な著作・論文

今村氏は、多数の著書や論文を発表しており、その一部を以下に示します。

著書:「津波の事典」（朝倉書店）
論文:
2011年東北地方太平洋沖地震の津波断層モデルの再検討
2018年スラウェシ島地震によるパル湾西部でのビデオ映像を用いた津波発生状況の分析
津波被災後の沿岸観光地における来訪者の津波に対する意識・備え
高知県における最大クラスの津波による地形変化と潜在的影響の評価
東日本大震災の津波避難行動へ影響を与えた要因に関する分析
護岸・陸上構造物に対する津波力の大規模実験
遡上津波力に関する大規模実験
直線状海岸における多成分潮流の計算
三陸沖での新しい監視方法による津波情報提供の可能性
* 1964年新潟地震津波にみる港湾域での複合災害の実態と今後の課題

社会貢献

今村氏は、研究活動に加えて、防災・減災に関する社会貢献にも積極的に取り組んでいます。復興庁復興推進委員会の委員長として、東日本大震災からの復興を推進しており、内閣府南海トラフ巨大地震対策検討ワーキンググループ座長代理、東北大学副理事（復興新生担当）などの要職も兼務し、防災・減災対策の推進に尽力しています。

まとめ

今村文彦氏は、津波研究の第一人者として、その専門知識と経験を活かし、津波防災の発展に大きく貢献しています。彼の研究成果は、今後の津波災害対策に不可欠であり、我々の安全な暮らしを支える重要な基盤となっています。

今後も、彼の研究活動と社会貢献に目が離せません。

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