今様色

今様色とは

今様色（いまよういろ）は、平安時代に流行した、鮮やかな紫がかった紅色のことです。「今様」とは、「現代風の」「流行の」という意味で、当時最新の流行色であったことを示唆しています。この色は、遅くとも10世紀頃には貴族の間で愛用されていました。

色の解釈の多様性

今様色の具体的な色味については、文献によって解釈が異なります。

『源氏男女装束抄』: 「紅のうすき、ゆるし色」とあり、淡いピンク色に近い色とされています。
『胡曹抄』: 「紅梅ノ濃」とあり、やや濃い紫紅色であるとされています。
『花鳥余情』: 「紅梅ノ濃」としつつ、「濃紅ニモ非ズ、色又紅梅ニモ非ズ。半ノ色ニテ此出来ル色ナレバ」と、濃紅と紅梅色の中間色であると定義しています。また、「聴色（ゆるしいろ）と同ジキナリ」とあり、「ゆるし色」とは濃い紅以外の色を指し、今様色もその一種であると解釈できます。

このように、今様色の解釈には幅があることがわかりますが、いずれの説も鮮やかな紅色であるという点では共通しています。

「ゆるし色」と今様色

『花鳥余情』で言及されている「ゆるし色」は、一斤染（いっきんぞめ）の異名です。一斤染とは、本来、絹二反をベニバナ一斤で染めた淡いピンク色を指します。これは、当時の染色規制で禁色とされた濃紅を避けるための措置でしたが、実際には規制をかいくぐって濃く染められたものも多く存在しました。今様色は、この一斤染の規制を意識しつつ、濃紅に近い鮮やかさを目指した色だったと考えられます。

文学作品における今様色

王朝文学では、今様色は若紫など、高貴な身分の女性が身に着ける場面でよく登場します。これは、今様色が単なる流行色ではなく、高貴な身分を示す色としても認識されていたことを示しています。文学作品での描写から、今様色は、禁色である濃紅に似ない程度の鮮やかな紅色だったと推測されます。

装束における今様色

文政13年（1830年）に編纂された装束集成『四季色目』には、表が紅梅色、裏が濃紅梅色の今様色の襲（かさね）が登場します。これは、今様色が単色ではなく、襲の色合わせとしても用いられていたことを示しています。

まとめ

今様色は、平安時代に流行した鮮やかな紫味の紅色であり、文献によって解釈に幅があるものの、紅梅色と濃紅の中間色として捉えることができます。また、高貴な女性が身に着ける色としても描かれており、当時の社会において重要な意味を持つ色だったと考えられます。

関連項目

紅梅色
一斤染

参考文献

福田邦夫『すぐわかる　日本の伝統色』東京美術, ISBN 4-8087-0784-5
吉岡幸雄『日本の色辞典』紫紅社, ISBN 4-87940-549-3
長崎盛輝『かさねの色目　平安の配彩美』青幻社, ISBN 4-916094-54-9

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