士

士（し）とは

前近代の東アジアにおいて、「士」は政治的な統治階級に属する人物、または優れた能力や徳を備えた人物を指す言葉として用いられました。その意味合いは、時代や地域によって大きく変化してきました。

中国における士

周代

周代の身分制度においては、支配者層は周王を頂点とし、諸侯、卿、大夫、そして士によって構成されていました。これらの階層は官職と邑（都市国家）を世襲しており、士は支配階層の最下層に位置づけられていました。

春秋時代

春秋時代中期以降、従来の階層秩序が崩壊し、官職や土地を失う者が現れました。その結果、世襲の官職や土地に依存せず、自身の能力によって官職に就く新たな支配者層が「士」と呼ばれるようになりました。

秦・漢代

秦・漢代には、古い身分制度が消滅し、皇帝による中央集権国家が成立しました。皇帝の代理として民を支配する「吏」が登場し、士は在野または朝廷にいる有能で徳のある人物を指すようになりました。

三国時代～魏晋南北朝時代

三国時代になると、在野の士が積極的に求められるようになり、魏・晋の時代には九品官人法という官吏採用制度を通じて士が官吏に登用され、士による政権が誕生しました。しかし、九品官人法が才能よりも家柄を重視するようになると、士も門閥貴族化し、「士族」と呼ばれるようになりました。

宋代

宋代には、科挙という試験に基づく官吏登用制度が一般化し、貴族政治から中央集権体制へと移行しました。読書人が文人官僚となり、士と大夫を合わせた「士大夫」という新たな支配階層が成立しました。士大夫のための新しい学問が模索され、儒学においては朱子学などが登場しました。

朝鮮半島における士

朝鮮半島における士は、身分制度の最上位に位置し、社会的な恩恵を最大限に享受する一方で、納税や軍役などの義務をほとんど負いませんでした。19世紀に朝鮮半島を訪れたイザベラ・バードは、その著書『朝鮮紀行』の中で、士族を吸血鬼に例えています。

日本における士

日本の「士」については、中国や朝鮮半島とは異なる独自の発展を遂げました。（詳細な記述は省略）

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