今福の戦い

今福の戦い

今福の戦いは、1614年（慶長19年）の大坂冬の陣において、大坂城の北東に位置する今福村を舞台に行われた戦闘です。この地は、大和川の北岸に今福村、南岸に鴫野村があり、低湿地帯が広がる場所でした。そのため、軍勢が展開できるのは堤防上のみで、周囲は田圃という地形的な特徴がありました。

戦闘前の配置

豊臣方は、今福村に3箇所の堀切と4重の柵を設け、矢野正倫と飯田家貞にそれぞれ300の兵を率いさせ、守備を固めていました。一方、徳川家康は今福村に付け城を築くため、今福・鴫野両方の柵の奪取を命じました。そして、佐竹義宣指揮下の1,500の兵を今福へ派遣しました。

戦闘の経過

11月26日未明、佐竹勢は今福への攻撃を開始しました。佐竹勢の渋江政光や戸村義国らの活躍により、豊臣方の第4柵までを占拠し、矢野と飯田は討ち死にしました。しかし、豊臣方の木村重成が援軍として駆けつけ、反撃に転じたため、佐竹勢は一時的に後退しました。

膠着状態が続く中、大坂城天守から戦況を見ていた豊臣秀頼は、後藤基次に救援を命じました。後藤が到着し、木村と共に突撃を指揮すると、佐竹勢は再び押し戻されました。佐竹勢の先鋒隊は、渋江政光が木村重成の指示による狙撃で討ち死にしたことで潰走しました。佐竹義宣は、大和川対岸にいた上杉勢に救援を要請しました。

上杉景勝、堀尾忠晴、榊原康勝らの軍勢がこれに応じ、大和川の中州まで進出して銃撃を開始したため、豊臣軍は撤退を余儀なくされました。この戦いにおいて、徳川秀忠は、佐竹家中の黒沢道家ら5名に感状と褒美を与えています。

戦いの影響

今福の戦いは、大坂冬の陣における重要な戦いの一つであり、両軍にとって多くの犠牲を伴う激戦となりました。佐竹軍の苦戦と上杉軍による援護が、戦いの勝敗を大きく左右したと言えるでしょう。この戦いを経て、徳川方は大坂城攻略に向けてさらに攻勢を強めることになります。

関連史料

今福の戦いに関する史料としては、以下のようなものが存在します。

『駿府記』：徳川家康の動向を記した史料です。
「義宣家譜」（『佐竹家譜』）：佐竹義宣の生涯を記録したもので、特に「慶長十九年十一月二十六日の条」は、今福の戦いの詳細な記述がみられます。
『大坂御合戦実録』（『今福表御合戦記』）：佐竹家臣によって編纂された記録で、『難波戦記』『太平楽記』『真田三代記』といった読み物的な虚構部分を批判し、記録としての正確性を追求したとされています。
『大坂御陣之留帳』：上杉家の記録で、佐竹軍を援護した様子が記されています。
『紀伊国物語』：第三者による覚書で、佐竹軍の苦戦と上杉軍による援護の状況を伝えています。

参考文献

『戦況図録 大坂の陣』（新人物往来社 別冊歴史読本56）
『激闘 大坂の陣』（学研 歴史群像シリーズ【戦国】セレクション）
金子拓『記憶の歴史学--史料に見る戦国』講談社〈講談社選書メチエ〉、2011年。

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