今純三

今純三：日本の銅版画を牽引した画家

今純三（1893年-1944年）は、日本の銅版画界に多大なる貢献を果たした画家です。青森県弘前市出身の彼は、独学で銅版画の技法を研究し、昭和初期における銅版画の普及に大きく貢献しました。本稿では、彼の生涯と作品、そして日本の銅版画界への影響について詳細に探ります。

青森から東京へ：初期の経歴

今純三は、代々弘前藩の典医を務めた家系に生まれました。医師である父の影響を受け、幼少期は青森で過ごします。弘前市立城西小学校、高等小学校を経て、1906年、父の開業に伴い一家で上京。独乙学協会学校中学部に入学しますが、その後退学し、太平洋画家会研究所や本郷洋画研究所で研鑽を積みます。夜間は早稲田工手学校建築科に通い、建築の知識も習得しました。油絵の才能も開花し、文展や博覧会に出品、入選を果たすなど、若くして画家としての道を歩み始めます。

多彩な活動：映画美術から版画へ

1919年には帝展に入選、その後は松竹蒲田撮影所美術部で背景設計などに携わるなど、活動の幅を広げます。資生堂意匠部で主任を務めた後、関東大震災を機に青森へ移住。この転機が、彼の生涯を大きく変えることになります。青森で石版画やエッチングの研究を本格的に開始し、印刷会社啓明社勤務を経て、青森県師範学校で図画科の教授嘱託として後進の育成にも尽力しました。

エッチング技法の探求と教育活動

師範学校退職後は、画業に専念。東奥日報社編集局嘱託として『青森県画譜』を刊行するなど、郷土の風景を版画で記録しました。1935年には『エッチング奥入瀬渓流連作』、『エッチング創作版画小品集』の制作に着手、本格的なエッチング作品制作に励みます。西田武雄（西田半峰）が創刊した雑誌『エッチング』では、「私のエッチング技法」を連載。自身の技法を広く公開し、日本のエッチング普及に貢献しました。晩年は上京し、池袋でエッチング版画の制作に専念。1943年には『版画の新技法』を出版、後世に技術を伝えるとともに、日本の版画界に大きな足跡を残しました。

青森の版画教育と功績

今純三の青森県師範学校での教育活動は、青森における版画教育の盛んな発展に大きく寄与しました。また、長年にわたり東奥美術展覧会の審査員を務め、青森の美術界を支えました。彼の才能は、油絵、映画美術、そして銅版画と多岐に渡り、常に探究心と創造性を持ち続けました。

晩年と没後

過労により発病、1944年に51歳で亡くなりました。彼の功績は、数々の作品、そして弟子たちを通じて、現在も日本の銅版画界に影響を与え続けています。彼の作品は、郷土の風景や自然への深い愛情、そして独自の技法に対する探究心が感じられ、多くの人々に感動を与え続けています。彼の没後も、作品集や伝記が刊行され、その生涯と業績は広く知られるようになりました。今純三は、日本の銅版画の歴史に燦然と輝く、重要な存在なのです。

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