仏教系大学

仏教系大学とは、仏教の教えや思想を基盤とする組織、あるいは仏教に関わる人物によって設立された高等教育機関を指します。特に日本では、古くから続く仏教の伝統的な宗派が設立母体となっている大学が多くを占めています。これらの大学は、かつては主に僧侶の後継者を育成する役割を担っていましたが、時代の移り変わりとともに、一般の学生や信徒に対して、より広範な教養や社会で役立つ専門知識・技術を身につける教育の場へと発展してきました。現在では、仏教学はもちろんのこと、人文科学、社会福祉、教育、医療など、多様な学問領域を網羅する学部や学科を設置しています。

沿革

仏教における教育機関の歴史は非常に古く、起源を遡れば、インドにおいて治世者の支援のもと、ナーランダ僧院やヴィクラマシーラ僧院などが設立され、多くの学僧たちが集い、高度な仏教思想を学びました。玄奘三蔵のような求法僧もこうした学び舎で研鑽を積んでいます。

東南アジアのタイ、ミャンマー、スリランカといったテーラワーダ仏教が主流の国々では、国立大学や有力寺院が主体となり、仏教の後継者育成を目的とした大学が設立されています。

一方、日本の仏教系高等教育の歴史は、平安時代初期に空海が庶民のために開いた綜藝種智院にその源流を見ることができますが、これは空海没後に衰退しました。その後は、比叡山や高野山などで僧侶となるための本格的な教育カリキュラムが構築されていきます。室町時代後期から江戸時代にかけては、各宗派が自派の僧侶を養成するために「檀林」と呼ばれる教育機関を発展させました。これらの檀林が、明治維新後の近代的な学制改革を経て、今日見られる新制大学へと姿を変えていったのです。現在、日本の仏教系大学の多くは「仏教系大学会議」を結成しており、音楽祭の開催や単位互換制度、図書館の相互利用といった大学間での連携や交流活動を行っています。

台湾では、国民党の統治が始まって以降、中国大陸から渡ってきた僧侶たちによって佛光山や法鼓山などの宗派が設立され、その後、後継者育成や信徒への教育のために大学の設立が進みました。韓国でも、日本の統治終了後に復興した曹渓宗などの宗派が、僧侶や一般の人々への教育機会提供のため、東国大学校などを設立しています。欧米各国においても、伝道活動を行った各宗派によって、それぞれの地域に合わせた形で仏教系の大学が設立される例が見られます。

教育内容と学生層

設立の経緯から、多くの仏教系大学には、仏教の教義や歴史、文化を深く学ぶ仏教学部や仏教学科が設置されています。大学名に直接「仏教」という言葉を冠する例としては佛教大学があり、かつては四天王寺大学も「四天王寺国際仏教大学」という名称でした。戦後間もない頃までは、学生の大部分が寺院の後継者でしたが、2024年現在では、一般家庭出身の学生が多数を占めるように変化しています。これは、仏教系大学が専門的な宗教学研究に加え、社会の多様なニーズに応える幅広い学問分野を提供し、より開かれた教育機関となっている現状を反映しています。一部では、キリスト教系の「ミッション系大学」に対比して「シャクソン系大学」（釈尊系大学）という通称も用いられることがあります。

国内外の主な仏教系大学

日本の仏教系大学は、歴史的な背景からすべて大乗仏教の流れを汲んでおり、上座部仏教系の大学は存在しません。多くの大学が特定の宗派によって設立されていますが、近年では超宗派の大学も存在します。主な宗派グループに関連する大学は以下の通りです。

天台宗系：大正大学
真言宗系：種智院大学、高野山大学、大正大学、嵯峨美術大学など
浄土宗系：大正大学、佛教大学、淑徳大学など
浄土真宗系：龍谷大学、大谷大学、武蔵野大学、相愛大学など
法華宗（日蓮宗）系：立正大学、身延山大学、文教大学など
曹洞宗系：駒澤大学、愛知学院大学、鶴見大学など
臨済宗・黄檗宗系：花園大学、常葉大学など
超宗派：大正大学、足利大学
その他・仏教関連：東洋大学、仁愛大学など
新宗教系：創価大学（創価学会）、国際仏教学大学院大学（霊友会）など

海外にも多数の仏教系大学が存在します。

インド：新ナーランダ大学など
スリランカ：パーリ仏教大学など
タイ：マハーチュラロンコーンラージャヴィドゥャ大学、モンクット仏教大学など
ミャンマー：国際仏教大学など
韓国：東国大学校、中央僧伽大学校（曹渓宗）、金剛大学校（天台宗）など
台湾：佛光大学、南華大学、玄奘大学（佛光山）、慈済大学（慈済基金会）など
アメリカ：仏教大学院（浄土真宗本願寺派）、ナローパ大学（チベット仏教）、西来大学（佛光山）、アメリカ創価大学（SGI）など
オーストラリア：南天大学（佛光山）など
* 韓国の新宗教系：圓光大学校（円仏教）など

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