玄奘

玄奘（げんじょう）

玄奘は、602年に生まれ、664年に没した唐代の著名な訳経僧で、俗名は陳褘（ちんい）です。彼は仏教の深い理解を求めてインドへの旅を敢行し、多くの仏典を持ち帰りました。彼の業績は、法相宗の成立にも寄与し、今日に至るまでその影響が色濃く残っています。

生い立ちと仏教への帰依

玄奘は河南省洛陽近郊に生まれ、当初から優れた学問性を持っていました。彼は10歳で父を亡くし、兄の影響で浄土寺に通うようになりました。この時期、彼は『維摩経』や『法華経』を詠むなどして仏教に対する深い理解を深めていきました。

彼が出家を決意したのは、17歳の時で、隋の大理卿である鄭善果に特例を認められ、正式に僧となりました。その後、長安へ移り、さまざまな経典を学びましたが、さらなる知識を求めて益州に向かいます。

インドへの旅

629年、玄奘はインドへの旅に出発します。当時の唐は新たに成立したばかりで、国内の情勢は不安定でしたが、彼は密かに行動を開始しました。彼は河西回廊を通り、西域の商人たちと共に進んでいくうちに、高昌国に辿り着き、当地の王から援助を受けることができました。

その後、彼は天山を越え、インドのナーランダ僧院に到着し、戒賢（シーラバドラ）から唯識の教えを学きました。また、インド各地の仏跡を巡礼し、王ハルシャ・ヴァルダナのもとでも教えを乞うて学問を修めました。

帰国と翻訳事業

645年、16年の歳月を経て帰国した玄奘は、持ち帰った経典657部と仏像を長安に届けました。彼の帰国は当時の唐の皇帝、太宗によって歓迎され、翻訳事業に専念する機会を得ることができました。

貞観19年（645年）に彼は弘福寺で翻訳作業を始め、その後大慈恩寺に拠点を移しました。彼は実に76部1347巻に及ぶ経典の翻訳に携わり、その中には『大般若経』や『般若心経』などが含まれます。彼の新訳は特に評価され、中国語に正確な訳語を用いていました。これは宣教師としての彼の深い理解が背景にあります。

法相宗とその後の影響

玄奘自身は明確な宗派を創立することはありませんでしたが、その教えは後に法相宗の教義として確立されました。彼の弟子である基が実質的な創始者であり、玄奘の影響を受けた多くの僧侶たちが仏教界においてその影響を広げていきました。特に、日本の法相宗には彼の教えが深く根付いており、道昭を通じて伝わりました。

玄奘の死とその後の運命

玄奘は664年に死去し、長安南の興教寺に彼の遺骨が納められました。しかし、タワーは後に破壊され、遺骨は行方不明に。後に南京で玄奘の頭骨が発見され、戦後に分骨されて、各地の寺院に納められました。特に、慈恩寺に安置されている遺骨は多くの人々の訪れを受け、仏教信者にとっての重要な聖地となっています。

玄奘の著作と文化的影響

彼の旅の記録は『大唐西域記』としてまとめられ、当時のインドや中央アジアの状況を知る上で貴重な資料となっています。また、彼の生涯は『大慈恩寺三蔵法師伝』や『続高僧伝』に記録されています。玄奘の業績は、単に仏教の普及にとどまらず、文学や文化面にも多大な影響を及ぼしました。特に小説『西遊記』にも彼の存在が色濃く反映されています。彼の影響力は今日でも色あせることなく、仏教文化の重要な一部として位置づけられています。

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