法鼓山

法鼓山（Dharma Drum Mountain）について

法鼓山は、台湾を代表する大乗仏教系の団体であり、台湾仏教の主要な宗派の一つです。そのルーツは、釈東初（Dongchu）禅師が設立した「農禅寺」と「中華仏教文化館」にあります。この団体は、仏教の教えを広め、人々の心の平和と社会の浄化を目指しています。

歴史

創建と発展

1971年、東初禅師によって農禅寺が設立されました。農禅寺は、坐禅修行を重視する一方で、農業にも従事することで自給自足の生活を送っていました。東初禅師は、台湾における仏教文化の発展と人材育成に尽力し、毎年冬には救済活動も行っていました。1977年、東初禅師の弟子である釈聖厳（Shengyen）法師が中華仏教文化館と農禅寺の住職を継承しました。聖厳法師は、仏法の教えをより多くの人々に理解してもらい、実践してもらうために、普及活動に力を注ぎました。

農禅寺の信者と中華仏教研究所の学生が増加するにつれて、より広い場所が必要となり、1989年に台北県金山郷の土地を購入し、聖厳法師がその地を「法鼓山」と命名しました。これにより、法鼓山という名前の団体が誕生しました。

開山

法鼓山の第一期工事は1993年に開始され、同時に教育理念を具体化するため、法鼓大学設立準備処が設立されました。建設が進むにつれて、法鼓山は中国の伝統的な仏教寺院に倣い、正殿の真下に地下宮殿を設置しました。1996年には、本殿基礎の儀式と地下宮殿に宝物を納める儀式が執り行われました。300点以上の台湾仏教の典籍や文物が納められ、西暦3000年に開封されることが記されました。これは台湾仏教文化の新しい歴史を刻む出来事でした。

2001年には第一期工事が完了し、中華仏教研究所や僧伽大学が移転してきて、仏教教育園区が具体化し始めました。2002年には正殿の棟上式が行われ、仏教教育園区の建設は新たな段階へと進みました。

命名の由来

「法鼓」という言葉は仏典によく登場します。例えば、『妙法蓮華経』には「撃大法鼓」という表現があり、仏法の太鼓の響きが人々の心を浄化し、安楽と平静をもたらすという意味があります。法鼓山の地理的な形状が太鼓が横たわっているように見えることから、経典の比喩に基づき「法鼓山」と名付けられました。

法鼓山の宝物

2006年には、法鼓山世界仏教教育園区で法鼓山鐘楼落成記念式典が行われました。鐘楼には「法華の鐘」が設置され、法鼓山の宝となっています。法華の鐘は青銅製で、重量254.5トン、高さ4.5メートル、直径2.6メートルという巨大な梵鐘です。2004年に日本の老子株式会社に鋳造を依頼し、2005年に完成しました。梵鐘の内側と外側には、『妙法蓮華経』全巻と『大悲呪』が鋳込まれ、多宝塔と双仏陀坐像が描かれています。

理念

法鼓山の理念は、「人の品質を高め、この世を浄土にする」というものです。この理念に基づき、1989年に法鼓山は正式に設立されました。聖厳法師は「大衆の悲願成就」を説き、1992年には「心の環境保護」を提唱しました。1994年には「四環」の理念が掲げられました。

四環

四環とは、四つの環境保護を意味します。

心の環境保護: 心の浄化と安定を保つこと。
礼儀の環境保護: 心、言葉、身のマナーを浄化し、調和を促進すること。
生活環境保護: 質素で自然な生活を送り、禅宗の「修行は常住坐臥」の教えを実践すること。
自然環境保護: 大自然に感謝し、自然を保護すること。

法鼓山はこれらの理念を実践するために、合同葬儀や婚礼を行い、人々に四環の観念を生活に取り入れるよう促しています。

心の五・四運動

1999年には「心の五・四運動」が提唱され、これまでの重要な観念と方法を統合し、21世紀の生活規範としました。心の五・四運動は、四つの環境保護運動を推進するもので、仏法の教えを日常に取り入れやすくしたものです。五つの大きな項目があり、各項目に四つの「心」の観念と方法があるため、「心の五四」と呼ばれています。

四安、四要、四它、四福

四安: 安心、安身、安家、安業。人の品質を高め、新たな秩序を築くことを目指します。
四要: 必要なものだけを求め、煩悩に立ち向かい、心の安定を保ちます。
四它: 問題に直面し、受け入れ、処理し、解放することを説きます。
四福: 福を知り、惜しみ、養い、分け与えることで、社会の福祉を増進します。

法鼓山は、これらの理念を基盤に、仏教の教えを広め、社会の浄化を目指しています。

関連寺院、団体、道場及び組織

法鼓山は、多くの関連組織を有しており、それぞれが独自の役割を担っています。

僧団

1980年に創立された僧団は、法鼓山の中核組織です。僧団は、仏教教団の組織化、青年僧の育成、法鼓山の理念の普及を目的としています。研究開発、座禅修行の推進、仏学教育、思いやりの心の教育普及などを行っています。僧団は聖厳法師を精神的な指導者とし、1977年に聖厳法師が台湾に帰国した際に始まりました。

中華仏教文化館

1955年に創立された中華仏教文化館は、法鼓山の発祥地です。仏教教育、文化、社会への思いやり、正しい仏法の普及を目的としています。各種共修活動や法会を主催し、仏教文化の伝承と推進に尽力しています。

農禅寺

1975年に創建された農禅寺は、仏教教育、文化、社会への思いやり、正しい仏法の推進を目的としています。念仏、座禅、法会、仏典講義などの活動を行っています。農禅寺は、法鼓山の重要な発祥地であり、東初禅師が北投に土地を購入して建設しました。農禅寺は、自給自足と坐禅修行を重視する場所として知られています。

精舎

法鼓山は、台湾各地に分院や道場を持ち、仏法の普及に努めています。「精舎」とは、修行に励む場所を意味し、基隆精舎、中山精舎、中正精舎などが存在します。

座禅修行普及センター（伝燈院）

2000年に設立された座禅修行普及センターは、座禅のシステム化、普及を目的としています。現代人のニーズに合わせた座禅修行の研究開発を行っています。2005年に「伝燈院」に改名しました。

仏教学普及センター

2000年に設立された仏教学普及センターは、仏教学の普及活動を制度化することを目的としています。仏教経典の理解を深め、仏教の各宗派を認識させ、仏教学を広める活動を行っています。

護法総会

護法総会は、法鼓山の活動を支援する組織です。募金活動を行い、仏法の普及と社会の発展に貢献しています。

仏法青年会（青年発展院）

仏法青年会は、若者のための組織です。青年が仏教を学び、座禅を実践する機会を提供し、仏法の普及を目指しています。2006年に「青年発展院」に改名しました。

僧伽大学

僧伽大学は、僧侶を育成する教育機関です。中国仏教の理論と実践を学び、社会に貢献する僧侶を育成することを目指しています。学生は3年目に剃髪し、僧団の一員になることが義務付けられています。

中華仏教研究所

中華仏教研究所は、仏教学の高等教育機関です。仏教の研究と教育を推進し、仏教文化の発展に貢献しています。

人文社会学院

人文社会学院は、宗教的な視点と人文科学的な視点から、社会に貢献する人材を育成することを目指しています。設立準備が行われましたが、現在まで正式には設立されていません。

法鼓文化

法鼓文化は、出版事業を行う組織です。仏教関連書籍や雑誌を発行し、仏教文化の普及に貢献しています。東初和尚が編纂した書籍を引き継ぎ、聖厳法師の著作も出版しています。

基金会

法鼓山は、複数の基金会によって運営されています。

法鼓山文化教育基金会
法鼓山仏教基金会
法鼓山社会福利慈善事業基金会
法鼓山人文奨学学術基金会
財団法人聖厳教育基金会
法鼓山大愛基金会

これらの基金会は、法鼓山の活動を資金面で支えています。

法鼓山は、その理念と組織を通じて、人々の心の平和と社会の浄化に貢献しています。仏教の教えを広め、人々の生活に役立つことを目指しています。

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