仙北町

仙北町（せんぼくまち）

「仙北町」は、かつて秋田県の中央部に存在した自治体です。地理的には秋田県の内陸中央部、当時の大曲市（現・大仙市大曲地域）の東側に位置していました。面積は約29.56平方キロメートルと、当時の自治体としては比較的小規模でした。町域は全体的に起伏が少なく平坦な地形が広がり、丸子川、川口川、矢島川、窪堰川といったいくつかの河川が流れ、西へと合流しています。町内には真山、長森、一ッ森といった低い山地も見られます。2005年（平成17年）3月22日、周辺の市町村と合併し、現在は大仙市の一部となっています。

歴史と文化遺産

この地域は古くから人々が暮らしていた痕跡が多く残されており、特に豊かな歴史遺産が存在します。平安時代初期の801年頃に築かれたと考えられている「払田柵跡（ほったのさくあと）」は、当時の蝦夷に対する前線基地としての役所跡であり、国の史跡に指定されています。この遺跡は1916年（大正5年）に発見され、1931年（昭和6年）には国の史跡となりました。また、「星宮遺跡（ほしのみやいせき）」からは、縄文時代晩期の精巧な土偶や、弥生時代の水田跡が発見されており、さらに古い時代の集落や農耕の様子をうかがい知ることができます。江戸時代に当地を治めた池田氏の屋敷跡にある「池田氏庭園」は、東北地方における近世大名庭園の代表例として、国の名勝に指定されています。これらの国指定の文化財に加え、町指定の文化財として「堀見内ささら」や「高梨神社正神楽」といった伝統芸能、そして美しい「水芭蕉群」が含まれていました。

自治体としての歩み

仙北町の直接的な前身は、1955年（昭和30年）3月31日に横堀村と高梨村が合併して誕生した「仙北村」です。これらの村は、明治時代に行われた町村合併により成立しました。近代以降、この地域は自然災害に見舞われることもあり、1896年（明治29年）の陸羽地震や1914年（大正3年）の秋田仙北地震では大きな被害が発生しました。昭和中期以降、仙北村は積極的な地域振興策を展開します。1960年代には公民館、体育館、学校給食センター、母子健康センター、国民保養センター「秋仙荘」、老人憩いの家「仙寿荘」、村民プールといった公共施設が次々と整備され、住民生活の質の向上に力が注がれました。産業面では、1970年（昭和45年）に農村基盤整備総合パイロット事業調査地区に採用されるなど農業振興が進められ、1977年（昭和52年）には水稲の反収が全国第2位を記録するほどの高い生産性を誇りました。また、マーベルト株式会社、三共光学工業株式会社、タニタ電気株式会社などの工場誘致も行われ、産業構造の多様化も図られました。保健衛生分野では先進的な取り組みが見られ、結核予防対策、がん対策、母子保健などで全国表彰を受けるなど、住民の健康管理にも力が入れられました。1974年（昭和49年）4月1日には村制から町制へ移行し、「仙北町」が誕生しました。広域消防の設置や町役場新庁舎の竣工などもこの時期に進められました。1989年（平成元年）には国道13号線が部分開通し、交通アクセスも向上しました。

教育

町域には、大仙市立仙北中学校、大仙市立横堀小学校、大仙市立高梨小学校といった教育機関が設置されています（いずれも現在の名称）。これらの学校の歴史は古く、1872年（明治5年）の学制制定に基づいて高梨、払田、戸地谷に学校が設けられたことに始まります。その後、時代の変遷や村の合併に伴って小学校の統合や改称が行われました。

地名の関連

岩手県盛岡市にある「仙北町（せんぼくちょう）」という地名や、JR東北本線の仙北町駅は、かつて秋田県のこの仙北郡から多くの移民が移住したことに由来すると言われています。

著名な出身者

仙北町は、俳人の加才信夫、作家の後藤宙外、ダンサーの後藤良、アナウンサーで後に福島市議会議員となった菅原美智子、漫画家の竹村洋平、音楽家の田村大三など、様々な分野で活躍する多くの著名人を輩出しています。

現在

仙北町は、悠久の歴史を物語る遺跡や文化財、平坦で肥沃な土地、そして地域住民のたゆまぬ努力によって発展を遂げた自治体でした。2005年の合併により、その名は単独の行政区分としては消滅しましたが、現在も大仙市仙北地域として、その豊かな歴史と文化、地域性は大切に受け継がれています。

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