仙台小槌銀

仙台小槌銀は、文久3年（1863年）に発行されたとされる幕末期の地方貨幣の一種です。この銀貨は、独特の形状とデザインから、当時の貨幣事情を考察する上で非常に興味深い存在です。

形状と特徴

仙台小槌銀は、楕円形の粒状をしており、豆板銀を彷彿とさせる形状をしています。大きさは縦が約18ミリメートル（6分）、横が約15ミリメートル（5分）程度で、質量は約8～9グラム（2.3匁前後）です。一般的に二朱通用とする説もありますが、質量が一分銀に近いこと、また豆板銀のように質量が一定でない訳ではないことから、一分通用とする説も有力です。

銀の品位は不明ですが、その質感から南鐐と呼ばれる上質な銀に近い、かなり高品位の銀が使用されていると推測されています。表面には、打ち出の小槌の模様の中央に「文久」の極印が打たれており、これは鋳造時期を示していると考えられます。裏面には中央に「銀山」の陽刻があり、右側には「仙」の陰刻極印が打たれています。この「仙」は仙台藩の貨幣であることを示していますが、「銀山」の刻印については、鋳造地を示すものと考えられているものの、具体的な鉱山名は特定されていません。

発行目的と流通

仙台小槌銀は、大量に製造された形跡が見られません。また、小槌の模様が施されているなど、貨幣としては手の込んだ作りになっていることから、流通目的よりも祝鋳的な銀貨として製造されたとする見方が有力です。現存するものは摩耗がほとんど見られないことから、実際にはほとんど流通していなかったことが伺えます。しかし、発行目的や詳細については、未だに解明されていない点も多く、謎に包まれた貨幣と言えるでしょう。

発行時期に関する異説

発行時期については、一般的に文久3年（1863年）とされていますが、小槌の両側に「二」の文字が配置されていることから、文久2年（1862年）とする説も存在します。また、この「二」は量目が二匁であることを示すとする説もありますが、実際の質量は二匁よりも若干大きいです。これらのことから、仙台小槌銀は、発行時期や目的など、さまざまな側面で未解明な部分を多く残しており、今後の研究が待たれる貨幣の一つです。

参考文献

青山礼志『新訂 貨幣手帳・日本コインの歴史と収集ガイド』ボナンザ、1982年。
清水恒吉『南鐐蔵版 地方貨幣分朱銀判価格図譜』1996年。
瀧澤武雄，西脇康 編『日本史小百科「貨幣」』東京堂出版、1999年。
日本貨幣商協同組合 編『日本の貨幣-収集の手引き-』日本貨幣商協同組合、2010年。

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