代 (五胡十六国)

代（だい）

代は、中国の五胡十六国時代に存在した鮮卑拓跋部の国です。315年から376年までの約61年間、北中国の一部を支配しました。この記事では、代の歴史、統治体制、文化、そして北魏建国への流れを解説します。

歴史

建国以前

代の起源は、鮮卑族の拓跋部に遡ります。258年、拓跋部の大人（たいじん：部族長）である拓跋力微（たくばつりょくび）は、本拠地を盛楽（現在の内モンゴル自治区フフホト市ホリンゴル県）に移し、周辺の部族を подчинилさせました。彼は魏との関係を深め、勢力を拡大しましたが、魏の離間策により一時的に弱体化します。

294年、拓跋禄官（たくばつろくかん）が大人となると、部族を3分割し、それぞれを統治させました。304年、漢（後の前趙）の劉淵（りゅうえん）が挙兵すると、司馬騰（しばとう）に協力して劉淵を討伐しました。307年、拓跋禄官の死後、拓跋猗盧（たくばついろう）が3分割された部族を再統一し、大人となりました。

拓跋猗盧の時代（310年 - 315年）

310年、并州刺史（へいしゅうしし）の劉琨（りゅうこん）は、拓跋猗盧に援軍を要請し、子の劉遵（りゅうじゅん）を人質として差し出しました。拓跋猗盧はこれを喜び、劉琨を支援しました。匈奴鉄弗部（きょうどてっぷつぶ）の劉虎（りゅうこ）が劉琨の支配地域を攻撃すると、拓跋猗盧は甥の拓跋鬱律（たくばつうつりつ）に2万の兵を与えて救援させ、劉虎を撃退しました。この功績により、劉琨は拓跋猗盧を大単于（だいえんう）・代公（だいこう）に封じました。

劉琨は洛陽救援のためにも援軍を要請し、拓跋猗盧は歩騎2万を派遣しました。また、拓跋猗盧は本拠地から離れた代郡に1万戸余りの部落を移住させ、自身の勢力基盤を拡大しました。

315年、愍帝（びんてい）は拓跋猗盧を代王（だいおう）に封じ、代郡・常山郡（じょうざんぐん）に官属を置くことを許可しました。これにより、拓跋猗盧は百官を置き、刑法を定めるなど、国家としての体制を整え、代国が成立しました。

しかし、拓跋猗盧は末子の拓跋比延（たくばつひえん）を後継者にしようとしたため、長男の拓跋六脩（たくばつりくしゅう）との間に争いが起こり、最終的に拓跋猗盧は拓跋六脩に殺害されました。その後、拓跋普根（たくばつふこん）が拓跋六脩を討ち、王位を継承しましたが、すぐに亡くなり、幼い息子が王位を継承した後、夭折しました。

拓跋鬱律の時代（316年 - 321年）

拓跋猗盧、拓跋普根とその子が相次いで亡くなると、拓跋鬱律が代王に擁立されました。彼は鉄弗部の劉虎を撃退し、烏孫（うそん）の故地を攻略するなど、勢力を拡大しました。拓跋鬱律は前趙や後趙との関係を断絶し、南方の平定を目指しましたが、伯母の惟氏（いし）によって殺害されました。

混乱期（321年 - 338年）

拓跋鬱律の死後、惟氏の子である拓跋賀傉（たくばつがくじょく）が即位しましたが、幼少のため惟氏が政治を執りました。その後、拓跋賀傉が親政を始めましたが、諸大人は帰服せず、拓跋賀傉は東木根山（とうぼくこんざん）に城を築いて移り住みました。拓跋賀傉の死後、弟の拓跋紇那（たくばつこつな）が即位しましたが、拓跋鬱律の子である拓跋翳槐（たくばつえいかい）が擁立され、拓跋紇那は宇文部（うぶんぶ）へ亡命しました。その後、拓跋紇那が再び王位を取り戻し、拓跋翳槐は後趙へ亡命しました。拓跋紇那は前燕（ぜんえん）へ逃亡し、国人は再び拓跋翳槐を擁立し、盛楽に遷都しました。

拓跋什翼犍の時代（338年 - 376年）

拓跋翳槐の死後、弟の拓跋什翼犍（たくばつじゅうよくけん）が即位しました。彼は百官を設置し、法を定めるなど、国家体制を整えました。前燕との関係を深め、婚姻関係を結びました。鉄弗部の劉衛辰（りゅうえいしん）を討伐し、高車（こうしゃ）を撃破するなど、周辺民族との戦いを繰り広げました。

376年、劉衛辰の要請により、前秦（ぜんしん）の苻堅（ふけん）が侵攻し、代は敗北しました。拓跋什翼犍は逃亡中に庶長子の拓跋寔君（たくばつしょくくん）に殺害され、代は前秦の支配下に入りました。

滅亡後

拓跋什翼犍の孫である拓跋珪（たくばつけい）は、前秦が弱体化すると自立し、代王を称しました。その後、国号を魏と改め、北魏を建国しました。

官職

代の官職は、晋朝（しんちょう）の制度に倣っていました。主要な官職としては、左右近侍職（さゆうきんじしょく）、内侍長（ないじちょう）、北部大人（ほくぶたいじん）、南部大人（なんぶたいじん）などがありました。

年号

代の年号は、建国（けんこく）（338年 - 376年）のみでした。

歴代君主

代の君主は、紇那と翳槐がそれぞれ廃位後に復位しているため、8主で10代を数えます。


代は短期間で滅亡しましたが、その後の北魏建国に繋がる重要な国家でした。

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