仮想敵部隊

仮想敵部隊（かそうてきぶたい）

仮想敵部隊とは、サバイバルや戦術訓練の実施において敵の立場を演じるために設置される専門部隊のことを指します。英語では「opposing force」もしくは略称の「OPFOR」として知られています。オーストラリアとアメリカではOPFORが一般的に使われている一方、カナダでは単に「enemy force（敵軍）」という表現が用いられています。航空部隊においては、「アグレッサー部隊（aggressor squadron）」と呼称されることがあります。

概要

基本となる訓練や演習では、仮想の敵を通常部隊が演じることもあります。しかし、ほとんどの軍隊では、より現実的な演習を実施するために年々進化した「本物の敵」を再現する特殊部隊が必要とされています。これらの部隊は、外交的な影響を避けるために特定の国を直接模倣するのではなく、その国の軍事的特色を忠実に再現する工夫を施しています。

仮想敵部隊は、演習の中で「レッドチーム」としての役割も果たします。これにより、自軍の戦略をあえて敵の視点から考察し、潜在的な弱点を明らかにし、訓練を通じてそれを改善することが期待されます。

演習では「本物の敵」に基づく武器や装備が使用され、制服もそれに類似したデザインが採用されることが一般的です。車両や航空機については、実際の敵から鹵獲したものか、自軍の装備に改良を加えたり塗装を施して模倣されたものが使用されます。これらは「仮想敵改造（Vismod）」と呼ばれる技術が用いられています。

また、演習では空砲や発煙筒に加え、多目的レーザー交戦システム（MILES）、プラスチック弾、ペイントボールなどが使用され、通常の訓練では無視されがちな被弾による死傷の概念が取り入れられることもあります。

アメリカ軍のOPFOR

アメリカにおいては、冷戦時代からソビエト連邦を想定した大規模なOPFORが設置されていました。ソビエト連邦の崩壊以降は、イラクやアフガニスタンなど、他の地域を対象にした訓練も増加しています。アメリカ陸軍の主要なOPFORの拠点として、以下の3つの訓練センターが存在します。

1. フォート・アーウィン国立訓練センター（カリフォルニア州） - 第11機甲騎兵連隊
2. フォート・ポーク統合即応訓練センター（ルイジアナ州） - 第509落下傘歩兵連隊第1大隊
3. ホーエンフェルス統合多国籍即応センター（ドイツ） - 第4歩兵連隊第1大隊

これらの部隊は、ソビエト連邦の自動車化狙撃兵を模した訓練を行い、様々な仮想敵改造を施した車両を利用しています。

例えば、NTCではT-80戦車風に改造されたM551シェリダン軽戦車、BRDM-2装甲車風のハンヴィー、BMP-2装甲車風のM113A2装甲車など、さまざまな改造車両が使用されています。JMRCでも同様に、BMP-2風のM113A2装甲車やT-80戦車風のM60A3などが展開され、これらは現代の演習の質を高める一助となっています。

2004年初頭には、NTCでイラクやアフガニスタンを舞台にした市街戦を想定した訓練が導入され、実際の文化や言語を模したOPFOR隊員が演じる場面も見られました。

その他の国の仮想敵部隊

イギリス陸軍は、サフィールド訓練部隊を仮想敵部隊として設置しています。大韓民国陸軍では、科学化戦闘訓練団が仮想の朝鮮人民軍陸軍の任務を担う部隊を持っています。日本の陸上自衛隊にも、部隊訓練評価隊隷下の評価支援隊が専門の仮想敵部隊として活動しています。

このように、仮想敵部隊は各国の軍事訓練において不可欠な存在となっており、現代の戦術や戦略を磨くための重要な要素となっています。

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