部隊訓練評価隊

部隊訓練評価隊（富士訓練センター）

部隊訓練評価隊（Training Evaluation Unit; TEU）は、山梨県南都留郡忍野村の北富士駐屯地に所在する富士学校隷下の訓練支援部隊です。通称「富士訓練センター（Fuji Training Center：FTC）」として知られています。

概要

この部隊は、全国の普通科中隊を対象に、北富士演習場において、交戦訓練教材（バトラー）を用いた実戦的な模擬訓練環境を提供します。いわゆる「演習対抗部隊」として機能し、中隊規模の諸職種混成部隊に対する訓練を支援します。

部隊の特性上、隊長は普通科連隊長職を経験した1等陸佐が務めます。統裁科が訓練全般を統括し、評価支援隊（第1機械化大隊）が対抗部隊を演じます。評価分析科は、訓練結果を客観的かつ計数的に評価します。設立当初は、普通科教導連隊と戦車教導隊からの支援で対抗部隊を編成していましたが、両隊の運営に支障が生じたため、2002年に直轄の「評価支援隊」が新編されました。

評価支援隊の隊員は、通常の迷彩服に加え、専用の迷彩服（対抗部隊用迷彩服）が支給されています。この迷彩服は、航空自衛隊の旧型戦闘服に似たパターンですが、配色が若干異なります。車両も、陸上自衛隊標準の二色迷彩に黒を加えた三色迷彩が施されています。

訓練環境の特徴

ドイツ連邦陸軍やアメリカ陸軍も同様の施設・部隊を保有していますが、従来のレーザーを用いた評価は、銃砲などの直接照準火器や地雷などの固定された武器の定量評価に限られていました。しかし、富士トレーニングセンターでは、訓練に参加する全部隊の隊員や車両・火器のモニタリング、定点センサーやカメラの設置、砲迫の着弾を演出する発煙装置などを導入することで、中隊規模ながら砲迫などの間接照準火器の定量評価も可能となりました。

訓練後の評価

訓練終了後、受閲部隊はAAR（アフター・アクション・レビュー）を行い、反省点を今後の訓練に活かします。中隊としての参加だけでなく、対抗部隊要員や評価分析官としての参加も可能で、訓練とは異なる角度からの練度向上が期待できます。

受閲部隊の編成例

訓練時の編成例として、以下のような増強普通科中隊（戦闘群）が挙げられます。

中隊本部
第1小銃小隊（訓練を行う普通科中隊の小銃小隊を基幹に増強）
第2～4小銃小隊（他の中隊から選抜された要員で編成・増員）
迫撃砲小隊（他中隊からの応援で編成）
対戦車小隊（他中隊からの応援で編成）
施設小隊（本管中施設作業小隊を基準とし、必要に応じて他部隊からの支援）
重迫撃砲小隊（重迫中隊から選抜された要員で編成）
対舟艇対戦車小隊（連隊直轄の対戦車中隊または上級部隊からの支援）
戦車小隊（師団隷下部隊からの支援）
特科分隊（指揮観測要員のみで、実際の射撃はシステムで再現）

実際の訓練では、師団や連隊の状況によって編成が変化することがあります。また、小銃小隊は、指定された中隊が基幹となり、残りの小銃小隊は他の中隊からの支援を受けて編成されます。

「不敗神話」と転換

部隊訓練評価隊は、対抗部隊として精強な隊員が配属され、模擬特科火砲支援下で90式戦車を装備した機械化歩兵部隊として、北富士演習場の地の利を生かし、長らく「不敗神話」を維持してきました。しかし、2019年には、第39普通科連隊基幹の第39戦闘団が「総合的に評価した結果、撃破判定」を勝ち取り、部隊訓練評価隊は初めて敗北を喫しました。

沿革

2000年（平成12年）3月28日：部隊訓練評価隊が北富士駐屯地で編成完結。
2002年（平成14年）3月27日：評価支援隊が滝ヶ原駐屯地で新編。
2019年（平成31年/令和元年）
3月：評価支援隊の戦車中隊の装備が74式戦車から90式戦車に更新。
11月4日 - 9日：第39戦闘団が史上初となる「総合評価で対抗部隊を撃破」の評価を獲得。

部隊編成

部隊訓練評価隊本部
統裁科
評価分析科
器材管理科
評価支援隊（滝ヶ原駐屯地）
評価支援隊本部
施設小隊
指揮観測班
第1普通科中隊
第2普通科中隊
戦車中隊

主要装備

90式戦車
96式装輪装甲車
軽装甲機動車
各種トラック
89式5.56mm小銃
5.56mm機関銃MINIMI
9mm拳銃
84mm無反動砲
110mm個人携帯対戦車弾（LAM　パンツァーファウスト3）
87式対戦車誘導弾

過去の装備品

74式戦車
79式対舟艇対戦車誘導弾

関連部隊

訓練評価支援隊

北千歳駐屯地に駐屯する陸上自衛隊教育訓練研究本部の隷下の訓練支援部隊。通称「HTC」。北部方面区（冬季は西部方面区）の演習場で戦闘訓練を基に訓練評価を行う。

方面指揮所訓練支援隊

各方面隊に設置される訓練支援部隊。「指揮所訓練センター」を運営し、各方面区の諸職種混成部隊に模擬訓練環境を提供する。

北部方面指揮所訓練支援隊（東千歳駐屯地）
東北方面指揮所訓練支援隊（仙台駐屯地）
東部方面指揮所訓練支援隊（朝霞駐屯地）
中部方面指揮所訓練支援隊（川西駐屯地）
* 西部方面指揮所訓練支援隊（健軍駐屯地）


これらの部隊は、陸上自衛隊の訓練体制において重要な役割を果たしており、部隊の練度向上に大きく貢献しています。

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