仮称H式艦上戦闘機

仮称H式艦上戦闘機について

仮称H式艦上戦闘機（かしょうHしきかんじょうせんとうき）は、日本の愛知時計電機航空機部（後の愛知航空機）が、ドイツのハインケル社に委託し、大日本帝国海軍向けに開発した艦上戦闘機です。名称の「H」はハインケル（Heinkel）の頭文字を指し、この試作機は社内で「HD-23」と呼ばれました。

背景

1926年4月、日本海軍は既存の一〇式艦上戦闘機を置き換えるため、新型艦上戦闘機の試作を三菱航空機、中島飛行機、愛知の三社に命じました。愛知は、自社が技術提携を結んでいたハインケル社に開発を委託し、1927年の夏にはドイツから2機の試作機が輸入されました。

その後、愛知と海軍は試作機の飛行試験を実施しましたが、海軍の要望に応える形で採用された不時着水時の浮揚力を向上させるための構造が影響し、機体は重量過多となり操縦性や空戦性能、着陸安定性において問題を抱えることが明らかになりました。

機体改造と不採用

問題を受けて、愛知のエンジニア三木鉄夫が機体の改造作業を行いましたが、性能の改善は見られず、結果的に三菱の鷹型試作艦上戦闘機とともに不採用が決定されました。最終的には、浮揚力をシンプルに設計しつつ軽量化を図った中島のG式艦上戦闘機が「三式艦上戦闘機」として制式採用されることとなりました。

機体の特徴

仮称H式艦上戦闘機は、木製の骨組みに羽布と合板を用いた複葉機です。浮揚力向上のために、V字型の滑水胴体を採用し、さらに胴体や下翼の前縁は水密化されています。また、構造にはスポイラーや投下可能な固定脚、プロペラの水平位置保持装置が搭載されており、これにより全体的な構造は複雑化し、重量も増加しました。

試作機2機は、それぞれ異なるエンジンを装備していました。1機にはBMW-6a（最大出力700 hp）が搭載され、もう1機には三菱製のイスパノ・スイザエンジン（最大出力450 hp）が使用されていました。

技術的詳細

イスパノ・スイザ装備機のデータ

• - 全長: 7.64 m
• - 全幅: 10.80 m
• - 全高: 3.40 m
• - 主翼面積: 35.32 m2
• - 自重: 1,275 kg
• - 全備重量: 1,830 kg
• - エンジン: 三菱 イスパノ・スイザ 水冷V型12気筒（最大560 hp）
• - 最大速度: 250 km/h
• - 巡航速度: 167 km/h
• - 実用上昇限度: 6,250 m
• - 航続距離: 1,233 km

武装

• - 7.7mm固定機銃 × 2
• - 30kg爆弾 × 2
• - 乗員: 1名

仮称H式艦上戦闘機は、その設計や開発において多くの革新を含んでいましたが、最終的な性能に課題が残り、他の機体に取って代わられる結果となりました。このような背景から、航空機の進化における重要な一歩として評価されています。

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