任亨泰

任亨泰（じん こうたい）

任亨泰（生没年不詳）は、明代初期に活躍した官僚です。字を古雍といい、本貫は襄陽府襄陽県にありました。

生涯

1388年（洪武21年）、任亨泰は科挙に合格し、その中でも首席という非常に優秀な成績を収めて状元となりました。その後、翰林院修撰に任じられ、官僚としてのキャリアをスタートさせます。1392年（洪武25年）には、詹事府少詹事・兼修撰に昇進し、さらに1394年（洪武27年）5月には礼部尚書という重要な役職に任命されました。

1395年（洪武28年）、秦王朱樉が亡くなった際、洪武帝は喪礼について定めるよう詔を下しました。これに対し、任亨泰は輟朝を一日とする意見を提出し、世子襲爵の礼についても定めました。同年8月、龍州の趙宗寿討伐のため、任亨泰は厳震直とともにベトナム陳朝への使節を務めました。1396年（洪武29年）2月に帰国しましたが、ベトナムで私的に購入した者を下僕としていたことが問題視され、監察御史に降格されました。その後、思明府の土官が陳朝と境界争いを起こした際、その責任を問われて免官となりました。

著書として『遺稿』2巻が残されています。

人物・逸話

任亨泰は、礼部尚書を務めていた際に、日照県の民である江伯児が、病気の母のために3歳の子を殺して泰山を祀ったという事件が起こりました。この事件について、役人が朝廷に報告しました。洪武帝はこの倫理に反する行為に激怒し、江伯児に杖罰100を加え、海南島での兵役を命じました。さらに、洪武帝は任亨泰に対し、孝行の事例を顕彰する基準を定めるよう命じました。

これに対し、任亨泰は次のように意見しました。「親に孝行するとは、親と同居し、敬愛し、養い、楽しませ、病気の際には薬を心配することです。氷の上に臥せたり、自分の肉を薬とするような行為は、通常の孝行とは言えません。自分の肝を割いて薬とし、さらに子を殺めるというのは、道を誤り、生命を傷つける極端な行為です。宗祠を祀る者がいなくなるのは最大の不孝であり、厳に戒めるべきです。もし、このような愚かな行為が再び報告されたとしても、顕彰の対象とすべきではありません。」

洪武帝はこの意見を高く評価しました。任亨泰は、形式的な孝行ではなく、親への真摯な思いやりと行動が重要であるという考えを示し、その倫理観は高く評価されています。

任亨泰は、その優れた学識と官僚としての実務能力、そして道徳的な見識によって、明代初期の社会において重要な役割を果たしました。

参考資料

* 『明史』巻137 列伝第25

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