伊勢継子

伊勢継子（いせ の つぎこ）は、宝亀3年（772年）に生まれ、弘仁3年（812年）に41歳でこの世を去った、平安時代初期の女性です。彼女は、木工頭であった伊勢老人の娘として生まれ、後に平城天皇の側室となり、皇室に深く関わることになりました。

継子は、平城天皇がまだ皇太子であった時代から、その側近くに仕えていました。そして、安殿親王（後の平城天皇）との間に、二男三女をもうけました。その子供たちの中には、後に嵯峨天皇の皇太子となる高岳親王や、巨勢親王、上毛野内親王、石上内親王、そして斎宮となった大原内親王がいます。彼女が産んだ子供たちの存在は、その後の皇室の歴史に大きな影響を与えました。

平城天皇が即位した後、大同3年（808年）11月、継子は無位から正五位下に叙位されました。さらに翌年の大同4年5月には、河内国の内蔵寮田11町を賜りました。ただし、この土地は、継子の死後は再び内蔵寮田とするという条件付きでした。このことから、継子が天皇からどれほど厚遇されていたかが伺えます。

しかし、彼女の人生は、常に平穏だったわけではありません。大同5年（810年）に起こった薬子の変により、息子である高岳親王が皇太子の地位を廃されるという出来事が起こりました。この事件は、継子にとって大きな衝撃であったでしょう。また、この事件は、当時の朝廷における権力闘争の一端を示すものでした。

薬子の変の後、弘仁2年（811年）4月、継子は従四位下に叙され、山城国紀伊郡の田2町を賜りました。この頃には、彼女は既に晩年を迎えていましたが、天皇からの信頼は変わらず厚かったと考えられます。

継子は、弘仁3年7月6日に41歳で亡くなりました。彼女の死後、その功績を称え、従三位が追贈されました。彼女の人生は、皇室の一員として、また、多くの子を産み育てた母としての役割を果たしたものでした。彼女の生涯は、当時の女性の生き方や、皇室における権力構造を考える上で、重要な示唆を与えてくれます。

継子は、平城天皇との間に多くの子をもうけ、その子たちが後の歴史に大きな影響を与えたという点からも、重要な人物であると言えます。彼女の生涯は、平安時代初期の皇室の動向や、当時の社会情勢を理解するための重要な手がかりとなります。

参考文献

• - 芳賀登ほか監修『日本女性人名辞典』日本図書センター、1993年。
• - 角田文衛監修『平安時代史事典』角川書店、1994年。
• - 坂本太郎・平野邦雄監修『日本古代氏族人名辞典』吉川弘文館、1990年。

関連項目

• - 平城天皇
• - 高岳親王

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