伊勢老人

伊勢老人（いせ の おきな）

伊勢老人は、奈良時代に活躍した貴族であり、正四位下・木工頭という官位を授けられ、勲四等を受勲した人物です。また、平城天皇の皇子である高岳親王の母方の祖父としても知られています。

出自

伊勢老人の出自は、中臣伊勢連に遡ります。元々、伊勢直という氏族でしたが、天平19年（747年）に伊勢大津ら7名が中臣伊勢連を賜りました。その後、天平宝字8年（764年）には、伊勢老人も伊勢朝臣の姓を得ています。さらに、天平神護2年（766年）には、大津が中臣伊勢連から伊勢朝臣へ改姓し、それ以降、老人らも伊勢朝臣と記載されるようになりました。伊勢大津は、天平勝宝元年（749年）に正六位上から外従五位下に昇叙しています。

経歴

伊勢老人は、天平宝字8年（764年）に起こった藤原仲麻呂の乱において、大きな転機を迎えます。この乱の最中の9月、従六位下から一挙に8階級昇進し、従四位下に叙せられるとともに、連姓から朝臣姓に改姓しました。乱後の10月には三河守に任ぜられ、孝謙上皇方についた功績により、勲四等を受勲しています。

天平神護2年（766年）には、同族の大津や子老と共に伊勢朝臣に改姓しています。神護景雲元年（767年）には、伊勢国や三河国に瑞雲が現れたことを祝して改元が行われた際、伊勢・三河両国の国司と共に昇叙され、従四位上に進みました。その後、称徳朝から光仁朝にかけて、中衛中将・外衛中将・外衛員外中将といった武官を務める傍ら、造西隆寺長官・修理長官・皇后宮亮などの京官も兼任しました。

天応元年（781年）に桓武天皇が即位すると、まもなく主馬頭に転じ、同年9月には正四位下に叙せられます。しかし、翌延暦元年（782年）に発生した氷上川継の乱に連座し、京外追放の処分を受けました。その後、赦免されたようで、延暦5年（786年）には縫殿頭に任ぜられ、その後、遠江守・木工頭を歴任しました。延暦8年（789年）4月8日に亡くなり、最終官位は木工頭正四位下でした。

官歴

以下は『続日本紀』に基づいた伊勢老人の官歴です。

時期不詳：従六位下
天平宝字8年（764年）
9月11日：従四位下（越階）、連姓から朝臣姓に改姓
10月20日：三河守
天平神護2年（766年）12月22日：中臣伊勢朝臣から伊勢朝臣に改姓
神護景雲元年（767年）
8月16日：従四位上
8月29日：兼造西隆寺長官（中衛中将・三河守如故）
神護景雲2年（768年）
6月6日：伊勢国国造（外衛中将兼造西隆寺長官三河守如故）
7月17日：兼修理長官（造西隆寺長官中衛員外中将如故）
宝亀2年（771年）正月23日：兼皇后宮亮
宝亀5年（774年）3月5日：兼遠江守
宝亀9年（778年）3月10日：中衛中将（修理長官遠江守如故）
天応元年（781年）
5月7日：主馬頭
9月29日：正四位下
延暦元年（782年）閏正月19日：京外追放（当時の官職は散位）
延暦5年（786年）5月12日：縫殿頭
延暦7年（788年）
2月6日：遠江守
6月26日：木工頭
延暦8年（789年）4月8日：卒去（木工頭正四位下）

系譜

父：不詳
母：不詳
生母不明の子女
女子：伊勢継子（772-812） - 安殿親王（後の平城天皇）宮人
女子：藤原真夏室

参考文献

宇治谷孟『続日本紀 （中）』講談社〈講談社学術文庫〉、1992年
宇治谷孟『続日本紀 （下）』講談社〈講談社学術文庫〉、1995年

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