高岳親王

高岳親王の生涯

高岳親王（たかおかしんのう、たかおかのしんのう）は、平城天皇の第三皇子として生まれました。名前の表記には「高岳」と「高丘」の二通りがあり、古い文献では「高丘」が用いられていたようです。親王は、嵯峨天皇の皇太子に立てられましたが、薬子の変により廃太子という憂き目にあいました。その後、名誉を回復し四品に叙せられますが、出家して真如入道親王と名乗り、仏道に深く帰依します。空海の十大弟子の一人として名を連ね、仏法を求めて入唐。さらに天竺を目指すという、波乱に満ちた生涯を送りました。

名前について

親王の名前は、「高岳」と「高丘」の二通りの表記が見られます。歴史を研究した杉本直治郎によれば、成立が最も古い『日本後紀』では「高丘」と表記されているのに対し、『続日本後紀』では「高岳」と表記されており、『日本三代実録』では両方の表記が混用されています。杉本は、最も古い『日本後紀』が「高丘」と記していることや、『日本三代実録』が引用する詔勅では全て「高丘」と表記されていることから、「高丘」が本来の表記であると主張しています。

また、「入道親王」は出家した親王に対する称号ですが、高丘親王の時代にはまだこの称号は存在しませんでした。そのため、六国史では法名を記す場合に「真如」とのみ表記されています。また、「真如法親王」という表記も見られますが、「法親王」は出家後に親王宣下を受けた者に対する称号であり、やはり高丘親王の時代には存在しなかったため、不適切であるとされています。

波乱の経歴

大同4年（809年）、父である平城天皇が退位し、嵯峨天皇が即位すると、高岳親王は皇太子に立てられます。この立太子には、桓武天皇の皇位継承に関する意向に対する平城天皇の反発や、嵯峨天皇の配慮など、様々な見方があります。母親の出自が皇族でも有力貴族でもなかったことが、当時波紋を呼んだとされ、「蹲居太子」と評されたという記録も残っています。

しかし、大同5年（810年）に起こった薬子の変により、高岳親王は皇太子の地位を廃されることになります。薬子の変への関与は確認されていませんが、廃太子を正当化する理由は見出されず、正式な詔勅も出されないまま、皇太子の地位を失いました。その後の弘仁13年（822年）には四品に叙せられ、名誉を回復しましたが、その後出家し、真如と名乗ります。奈良の宗叡や修円、そして空海の弟子として修行を積みました。

空海の十大弟子の一人となった親王は、高野山に親王院を開き、阿闍梨の位を受け、『胎蔵次第』を著しました。承和2年（835年）に空海が入定すると、高弟の一人として葬儀に立ち会っています。また、斉衡2年（855年）の地震で東大寺大仏の仏頭が落下した際には、東大寺大仏司検校に任じられ、修復の指揮を執りました。

晩年、高岳親王は仏法を求めて入唐することを決意し、朝廷に願い出ます。貞観3年（861年）に親王一行は奈良を出発し、翌貞観4年（862年）に明州（現在の寧波）に到着しました。長安では、留学僧の円載の協力で西明寺に迎えられますが、当時は武宗の仏教弾圧政策（会昌の廃仏）の影響で、仏教が衰退していました。そのため、親王は長安で優れた師を得ることができず、さらに天竺を目指すことを決意しました。

貞観7年（865年）、唐皇帝の勅許を得て、従者と共に広州から海路で天竺を目指して出発しましたが、その後消息を絶ちました。16年後の元慶5年（881年）には、羅越国（マレー半島の南端と推定されている）で亡くなったと伝えられています。虎の害にあったという説も残っています。

現在、マレーシアのジョホール・バルにある日本人墓地には、高野山の親王院が日本から御影石を運んで建立した、親王の供養塔があります。

親王の系譜

父：平城天皇
母：伊勢継子（伊勢老人の子）
妻：不詳（生母不明の子女あり）
男子：在原善淵（816-875）
男子：在原安貞（生没年不詳）

研究と文学

高岳親王の生涯は、佐伯有清による研究書『高丘親王入唐記 – 廃太子と虎害伝説の真相』や、澁澤龍彦の小説『高丘親王航海記』などの作品で描かれています。近藤ようこによる漫画化もされています。

関連事項

高岳親王塔
* 巴子国剣


高岳親王は、皇族としての地位を捨て、仏道を追求した波乱万丈な生涯を送った人物として、今もなお多くの人々に語り継がれています。

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