伊号第一潜水艦 (初代)

伊号第一潜水艦（初代）

伊号第一潜水艦（初代）は、日本海軍の伊一型潜水艦の1番艦として建造されました。竣工から太平洋戦争開戦まで、そして開戦後の初期の作戦に参加しましたが、1943年にガダルカナル島への輸送任務中に沈没しました。

艦歴

当初、大正10年度の軍備補充計画で建造が予定されていましたが、ワシントン海軍軍縮条約の影響で計画が変更され、大正12年度の艦艇補充計画に基づいて建造されることになりました。

1921年4月25日：第七十四潜水艦と命名
1922年2月10日：海軍大型七十四型の1番艦に定められる
1923年3月12日：川崎造船所にて起工
1924年10月15日：進水
1926年3月10日：竣工。横須賀鎮守府に本籍を定める

竣工後は、姉妹艦の伊2と共に第二艦隊第7潜水隊を編成し、訓練や哨戒任務に従事しました。その後、艦隊の再編などを経て、太平洋戦争開戦時には第六艦隊第2潜水戦隊第7潜水隊に所属していました。

太平洋戦争

1941年11月21日に横須賀を出港し、真珠湾攻撃ではカウアイ島東方沖で哨戒任務に就きました。1941年12月31日には、ハワイ島ヒロ湾を砲撃し、米水上機母艦ハルバードを撃破する戦果を挙げています。

1942年2月には豪州西岸での通商破壊作戦に従事。3月3日には、蘭貨物船シアンタルを撃沈しました。また、同月には、西ティモールから砲を運搬中の蘭軍下士官、兵士を捕虜にするなどの活動を行いました。

同年6月のアリューシャン攻略作戦支援に参加後、10月にはグッドイナフ島への輸送任務に従事。11月にはトラック島へ帰投し、整備を受けました。

沈没

1943年1月、伊1はガダルカナル島への輸送任務中に、カミンボ岬付近でニュージーランド掃海艇モア、キーウィの攻撃を受けました。キーウィからの体当たり攻撃を受けた後、座礁し、放棄されました。この戦闘で艦長を含む多数の乗員が戦死しました。

沈没後、艦内に残された暗号書などの機密書類が日本軍によって処分される前に、アメリカ軍によって回収されました。このことは、その後の日本軍の暗号解読に大きく貢献することになりました。

1972年には、オーストラリアのトレジャーハンターによって伊1の船体が発見され、艦首部分が浮揚されました。しかし、艦首部分は大きく損傷しており、その後解体されました。残りの船体は、二つに分断された状態で海底に残っています。

歴代艦長

伊号第一潜水艦の艤装員長、潜水艦長は以下の通りです。

春日篤 少佐：1925年4月1日 - 1927年7月29日
春日末章 少佐/中佐：1927年7月29日 - 1928年12月10日
中邑元司 少佐：1928年12月10日 - 1929年11月5日
香宗我部譲 少佐/中佐：1929年11月5日 - 1930年11月15日
佐藤四郎 少佐：1930年11月15日 - 1931年12月1日
長井満 少佐：1931年12月1日 - 1933年11月1日
今里博 少佐/中佐：1933年11月1日 - 1935年11月15日
永井宏明 少佐：1935年11月15日 - 1936年2月15日
大竹壽雄 中佐：1936年2月15日 - 1936年11月2日
小林一 少佐：1936年11月2日 - 1936年12月1日
宮崎武治 中佐：1936年12月1日 - 1937年10月5日
濱野元一 少佐：1937年10月5日 - 1939年11月20日
加藤良之助 中佐：1939年11月20日 - 1940年7月6日
小田為清 中佐：1940年7月6日 - 1940年9月16日
加藤良之助 中佐：1940年9月16日 - 1940年10月30日
大谷清教 中佐：1940年10月30日 - 1941年8月25日
安久榮太郎 中佐：1941年8月25日 - 1942年10月31日
坂本榮一 少佐：1942年10月31日 - 1943年1月29日 戦死、同日付任海軍中佐

参考文献

坂本正器/福川秀樹 『日本海軍編制事典』、芙蓉書房出版、2003年。ISBN 4-8295-0330-0
戦史叢書 第31巻 『海軍軍戦備(1) -昭和十六年十一月まで-』、朝雲新聞社、1969年。
雑誌「丸」編集部『写真 日本の軍艦 第12巻 潜水艦』（光人社、1990年） ISBN 4-7698-0462-8
* 伊藤秀美 『日本海軍暗号の敗北 Ｄ暗号はいかに破られたか』（紫峰出版、2018年9月）ISBN 9784907625399

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