伊号第三十六潜水艦

伊号第三十六潜水艦（いごうだいさんじゅうろくせんすいかん）は、大日本帝国海軍が建造した伊十五型[[潜水艦]]（巡潜乙型）の17番艦です。太平洋戦争中に多くの潜水艦が失われる中、伊号第三十六潜水艦は伊十五型の中で唯一終戦まで生き残った艦として知られています。

艦歴

起工から竣工まで

1939年（昭和14年）の第四次海軍補充計画（④計画）に基づき、伊号第三十六潜水艦の建造が決定。1940年（昭和15年）12月4日、横須賀海軍工廠で起工されました。当初は伊号第四十七潜水艦として命名されましたが、1941年（昭和16年）11月1日に伊号第三十六潜水艦へと改名されています。

1941年（昭和16年）11月1日に進水し、1942年（昭和17年）6月1日には稲葉通宗少佐が艤装員長に着任。そして9月30日に竣工し、稲葉少佐は初代艦長に就任しました。同日、呉鎮守府籍となり、訓練部隊である呉鎮守府呉潜水戦隊に編入されました。

太平洋戦争

1942年12月15日、伊号第三十六潜水艦は第六艦隊第1潜水戦隊第15潜水隊に編入され、本格的に太平洋戦争に参加することになります。以降、輸送任務、偵察任務、そして回天特別攻撃隊の母艦として、終戦まで戦い抜きました。

輸送任務

1942年12月18日に呉を出港後、トラックを経由してショートランドに到着。ガダルカナル島への輸送作戦に従事しました。ドラム缶に入った物資を大発を使って揚陸したり、陸軍兵士を輸送したりする任務を、1943年2月まで複数回行いました。

整備とキスカ島撤退作戦

1943年3月、横須賀に帰投し整備を受けました。同年6月には第1期キスカ島撤退作戦に参加しますが、曳航していた運貨筒を喪失。作戦は中止となりました。同年7月には第2期キスカ島撤退作戦の支援のため、幌筵を出港し哨戒任務に就きます。同年9月には、水上機発進試験中にディーゼル機関が故障したため、横須賀で修理を受けました。

偵察作戦

1943年9月、伊号第三十六潜水艦は逆探を装備。19日にはニイハウ島北方海域に到達しました。逆探でレーダー波を観測したため、米軍のレーダー基地がカウアイ島にあると判断。その後ハワイ諸島南西沖に移動し、10月16日に航空偵察を実施。搭載機は真珠湾上空を偵察し、戦艦や空母の在泊情報を送ったものの、その後行方不明となりました。同年11月にはカントン島へ向け主砲弾を発射し、その後クェゼリン、トラックを経由して12月にラバウルに到着しました。

回天特別攻撃隊

1944年1月から2月にかけて、伊号第三十六潜水艦はラバウル、トラック、佐世保で修理を受けました。同年3月には、マーシャル諸島への米軍の補給線を攻撃。4月には、米護衛空母オルタマハを攻撃しますが、撃沈には至りませんでした。

同年9月には後部主砲を撤去し、回天4基を搭載できるように改造。回天の母艦となりました。11月には回天特別攻撃隊の一員として出撃。20日に回天を発進させますが、目標への命中を確認できませんでした。

1945年1月には、ウルシー環礁への突入を試みましたが座礁。離礁後回天を発進させたものの、米軍の攻撃により回天は失われました。その後、呉に帰投し修理を受けました。3月には前部航空兵装を撤去し、前部にも回天2基を搭載できるようになり、計6基搭載となりました。

4月には、回天特別攻撃隊として出撃。輸送船団を攻撃し、戦果を上げたと報告されています。6月には、米揚陸艇修理艦エンディミオンを撃破。さらに米一般消耗品補給艦アンタレスを攻撃しましたが、米駆逐艦の反撃を受け、大きな損傷を受けました。しかし、回天を発進させ、駆逐艦を撃退することに成功しました。

終戦

1945年7月には、米潜水艦の攻撃を回避し、呉に帰投。8月6日、広島に原爆が投下された際、伊号第三十六潜水艦は呉海軍工廠のドックで係留されており、きのこ雲を目撃しています。同月には機銃掃射を受け、菅昌艦長が重傷を負うなど被害を受けました。終戦後、11月30日に除籍され、1946年 4月1日、ローズエンド作戦で五島列島沖に海没処分されました。

戦果

伊号第三十六潜水艦の公式記録上の戦果は、撃沈1隻、撃破2隻とされています。撃沈トン数は236トン、撃破トン数は8,131トンです。しかし、回天特別攻撃隊としての戦果は、正確には把握されていません。

沈没艦の発見

2017年、ラ・プロンジェ深海工学会が五島列島沖で伊号第三十六潜水艦を発見したと発表しました。これにより沈没地点が特定され、正立状態で沈んでいることが確認されました。

逸話

伊号第三十六潜水艦の初代艦長である稲葉通宗少佐は、出入港時に「南無八幡大菩薩」の幟を掲げていました。また、回天作戦が始まると、「七生報国」の幟を掲げていたという逸話が残っています。

歴代艦長

艤装員長
稲葉通宗少佐：1942年6月1日 -
艦長
稲葉通宗少佐：1942年 9月30日 -
寺本巌少佐：1944年2月15日 -
菅昌徹昭少佐：1945年2月5日 -

参考文献

(issuu) SS-253, USS GUNNEL. Historic Naval Ships Association.
(issuu) SS-420, USS TIRANTE. Historic Naval Ships Association.
雑誌「丸」編集部『写真日本の軍艦第12巻潜水艦』光人社、1990年。
木下悦郎ほか『リバイバル戦記コレクション9　炎の翼「二式大艇」に生きる』光人社、1990年10月。
小灘利春、片岡紀明『特攻回天戦回天特攻隊隊長の回想』海人社、2006年
外山操『艦長たちの軍艦史』光人社、2005年。
福井静夫『写真日本海軍全艦艇史』ベストセラーズ、1994年。
山下幸晴『わが潜偵　米機動部隊直上にあり』

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