伊場遺跡

伊場遺跡の概要

静岡県浜松市中央区伊場に位置する伊場遺跡は、弥生時代から平安時代にかけて存在した複合的な遺跡です。浜松駅から西へ進んだ遠州灘沿岸低地に、砂丘列の上に形成されているこの場所は、低湿地の遺跡として重要な文化財に指定されています。出土品は国の重要文化財として指定される見込みです。

沿革

伊場遺跡の存在は、1949年の2月に明らかになりました。この時、先の太平洋戦争中にできた大穴から弥生時代の土器が出土したことで、遺跡の存在が確認されました。その後4月から國學院大学考古学研究室が発掘調査を始め、弥生時代の環濠集落をはじめ、古代の敷知郡に関連する遺構も発見されました。1954年には県指定史跡に認定されましたが、1973年にその指定が解除され、1974年にはその決定を覆すための訴訟も起こされましたが、結果的に解除が続きました。

弥生環濠集落の発見

1986年までに行われた調査によって、三重の堀で囲まれた環濠集落の跡が発見され、さらには内部にあたる平地建物の跡や墓地の遺構も見つかりました。出土した物品の中には、木製の農具や珍しい木製短甲、さらに「伊場式土器」として知られる弥生土器が含まれており、これにより西遠江地域の弥生時代後期の指標となりました。また、古墳時代の集落跡や奈良時代の掘立柱建物群も見つかり、「伊場大溝」と呼ばれる河川の流路跡も調査により明らかになりました。

伊場遺跡群と古代官衙

伊場遺跡の周囲には他にもいくつかの遺跡があり、これらを合わせて「伊場遺跡群」と呼ぶことができます。このエリアの調査が進むにつれ、奈良から平安初期にかけての地方官衙である敷知郡衙や栗原駅家跡であることが判明しました。特に「伊場大溝」では、多くの平安時代の遺物が出土し、木簡には689年の名が刻まれたものもありました。

他にも土器類の中には「布知厨」や「少毅殿」といった墨書が見つかるなど、当時の社会の構造や生活が垣間見える重要な資料が数多く確認されています。特に須恵器の中には、社交的な交流があったことを示唆する個人名や役職名が見られ、当時の住民たちの生活が感じられます。

現在の状況

伊場遺跡はその重要性にも関わらず、一度は史跡の指定が解除されたものの、現在は浜松市によって「伊場遺跡公園」として整備され、公開されています。遺跡資料館も一度存在していましたが、現在は閉館し、資料は浜松市博物館に移されています。出土した木簡や土器の多くは静岡県の文化財にも指定され、これらの歴史的価値は今なお重要視されています。

アクセス

伊場遺跡へは、浜松駅バスターミナルからのアクセスが便利です。特定のバス路線を利用して「伊場遺跡入口」バス停で下車すれば、遺跡を訪れることができます。歴史のロマンに触れることができるこの場所は、多くの人々にとって魅力的な訪問先です。

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