伊東弘文

伊東弘文（いとう ひろふみ／こうぶん、1943年8月2日 - 2014年10月5日）は、日本の著名な財政学者であり、九州大学名誉教授です。専門は財政学、特に地方財政論であり、この分野における第一人者として知られています。彼の研究は、日本の財政制度に大きな影響を与えました。

生涯

伊東弘文は、大分県で生まれました。1966年に九州大学経済学部を卒業後、1968年には同大学大学院経済学研究科修士課程を修了しています。その後、東京大学大学院経済学研究科にて博士号を取得しました。学位論文は「現代西ドイツ地方財政論」であり、この研究が彼の学術的なキャリアの基盤となりました。

1969年、伊東弘文は北九州大学経済学部に助手として着任し、その後、講師、助教授、教授と昇進しました。1986年には九州大学経済学部の教授に就任し、2003年に定年退官するまで教鞭を執りました。退官後は、九州大学名誉教授の称号を授与されています。

研究活動

伊東弘文の研究は、特にドイツの地方財政制度に焦点を当てていました。彼は、ドイツの地方財政の歴史、構造、そして改革について深く研究し、その成果を多くの著書や論文で発表しました。彼の研究は、日本の地方財政制度のあり方を考える上で、重要な示唆を与えるものとして評価されています。

また、伊東弘文は、理論研究だけでなく、現実の政策形成にも積極的に関わりました。政府税制調査会専門委員、北九州市税財政調査会委員などを歴任し、2004年には総務省地方財政審議会会長に就任しました。これらの役職を通じて、日本の財政制度の改善に貢献しました。

主な著書と翻訳

伊東弘文は、多くの著書、編著、翻訳を執筆しています。その中でも特に重要なものとして、以下のものが挙げられます。

単著
『現代西ドイツ地方財政論』（文真堂、1986年）
『現代ドイツ地方財政論 増補版』（文真堂、1995年）
『入門地方財政』（ぎょうせい、1992年）
『補助金・税財源改革の到達点と今後の課題』（地方自治総合研究所、1997年）

共著
（佐藤進）『入門租税論』（三嶺書房、1988年／改訂版、1994年）

編著
『現代財政の変革』（ミネルヴァ書房、2005年）

共編著
（徳永正二郎）『アジア太平洋経済の成長と変動』（九州大学出版会、1992年）
（徳増倎洪）『現代経済システムの展望』（九州大学出版会、1997年）
（細江守紀）『現代経済の課題と分析』（九州大学出版会、2000年）

翻訳
リチャード・パイプス『レーニン主義の起源』（桂木健次との共訳、河出書房新社、1972年）
ボルフガング・レンチェ著、ディーツ社編『財政基本規範と財政調整』（自治総合センター、1996年）
* ヴォルフガング・レンチュ『ドイツ財政調整発展史：戦後から統一まで』（九州大学出版会、1999年）

これらの著作は、財政学の研究者だけでなく、政策担当者にとっても貴重な資料となっています。特に、ドイツの財政制度に関する研究は、日本における地方財政制度の改革を考える上で、重要な参考資料とされています。

伊東弘文は、その学術的な業績と社会的な貢献により、日本の財政学に大きな足跡を残しました。

もう一度検索