伊東長実

伊東長実：豊臣家臣から徳川家臣へ転身した異色の武将

伊東長実（いとう ながざね）は、戦国時代から江戸時代初期にかけての武将・大名であり、その生涯は激動の時代を象徴するかのようです。豊臣秀吉に仕え、その死後は秀頼に仕えましたが、関ヶ原の戦いを前に徳川家康に内通するという大胆な行動に出ました。その結果、豊臣家臣でありながら、最終的には徳川家に取り立てられ、備中国岡田藩初代藩主となったのです。

生い立ちと秀吉への仕官

永禄3年（1560年）、尾張岩倉の伊東長久の子として生まれた長実。早くから羽柴（豊臣）秀吉に仕え、天正4年（1576年）には秀吉の親衛隊である黄母衣衆に抜擢されるなど、その才能を認められていました。三木城攻めでの功績により織田信長から刀脇差を授けられたり、賤ヶ岳の戦いでの活躍を称えられ越前国内に600石を与えられたりと、着実に実績を重ねていったのです。

天正13年（1585年）には父の死により家督を相続し、秀吉直臣の馬廻組頭となりました。小田原の役では秀吉本陣の馬廻組を率いて従軍し、その戦功によって備中川辺に1万300石の所領を与えられました。

関ヶ原の戦いと徳川家への内通

秀吉の死後、長実は豊臣秀頼に仕えますが、慶長5年（1600年）の関ヶ原の戦いを前に、徳川家康に石田三成一派の挙兵を密告。この行動が、彼の運命を大きく変えることになります。その後も大坂七手組頭として大坂城に詰めますが、大坂冬の陣では徳川方の間者として城内の情報を逐一、京都所司代の板倉勝重に報告していました。

大坂夏の陣では、天王寺・岡山の戦いに遊軍として参加。しかし、落城前に子の長昌と共に大坂城を脱出し、高野山に隠れます。家康は長実の行動を許し、元和元年（1615年）には彼を召し出して秀忠に仕えることを許し、備中国下道郡などに1万300石を与え、岡田藩を開かせたのです。

異例の処遇とその評価

豊臣家臣でありながら徳川方に寝返り、最終的に大名として取り立てられるという長実の行動は、当時としても極めて異例でした。七手組頭の中で秀頼に殉じなかったのは青木一重と長実の2人だけであり、夏の陣に参加した大名で存続を許されたのは長実のみでした。

この処遇について、桑田忠親は「関が原の乱に三成の挙兵を密告した功をみとめられたからであろう」と指摘しています。一方で、秀吉直参の譜代衆としては「行動が陰険である」と評されています。

晩年とその後

元和2年（1616年）、長実は下道郡服部村に藩邸を置き、その後、上二万村、川辺村へと移り住みました。「川辺の殿様」として地域に親しまれた長実は、寛永6年（1629年）に70歳で死去。長男が早世していたため、家督は次男の長昌が継ぎました。

伊東長実の生涯は、戦国時代から江戸時代への移行期における武将の生き様を象徴するかのようです。主家への忠義と自己の保身、そして時代の流れを読む力。それらが複雑に絡み合い、彼 unique な軌跡を形作ったと言えるでしょう。

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