伊王野氏

伊王野氏の歴史と発展

伊王野氏（いおのし、いおうのし）は、下野国那須郡の伊王野を発祥地とする藤原氏長家流の一族です。この一族はその歴史を通じて様々な出来事に関わり、戦国時代を生き抜いてきました。特に源頼朝からの偏諱を受けたことにより、那須氏の重要な家系としての地位を確立しました。

源流と家督相続の背景

伊王野氏の起源は、元暦2年（1185年）に発生した屋島の戦いにさかのぼります。この戦いで扇を射落としたことで名を挙げた那須与一（宗隆、後に資隆）は、初めは那須氏の惣領となるものの、諸事情から兄の資之に家督を譲ることとなりました。この与一の子孫は、その後家系を守り続けることになります。

与一の実子はすでに他家に養子入りしていたため、与一の異母弟である宇都宮朝綱の娘を母とする那須資頼が婿に迎え入れられました。資頼は後に源頼朝から偏諱を受け、那須頼資と名を改めます。彼の後継者となる嫡男、那須光資が家督を継承しましたが、光資の次男が伊王野氏初代である次郎資長となりました。この資長は後に左衛門尉に任命され、伊王野次郎左衛門尉と称しました。

伊王野氏の勢力と発展

資長には多くの弟がいて、彼らもそれぞれ別の氏族の祖となりました。資長自身は、那須七騎の筆頭として大きな勢力を誇っていました。依然として、資長の系統はその後も鎌倉幕府から那須氏の惣領家として承認され、南北朝時代にも惣領を輩出していたとされます。

延応元年（1239年）、資長は伊王野に伊王野館を築いて伊王野氏を名乗ることになりました。その後、12代の伊王野資保までこの伊王野館に住んでいました。13代の伊王野資清は、長享年間に伊王野城を築いて乱世に備えました。

15代の伊王野資広の代では、子がなかったために同族の稲沢氏から養子を迎え入れ、17代の伊王野資真が誕生しました。この過程を経て、伊王野氏は戦国時代に突入。その後の18代、19代の伊王野氏は那須氏を助けて勢力を拡大する一方、時には対立する場面もありました。

戦国時代から江戸時代への移行

天正18年（1590年）、小田原征伐に遅参したことにより、豊臣秀吉から本領735石だけが安堵されましたが、その後も文禄・慶長の役や関ヶ原の戦いで活躍を見せました。江戸時代には旗本として家名を保ちながら、無嗣となったために子孫は水戸藩や大田原藩、鳥取藩などに仕官しました。

また、小瀧という姓に改めて、黒羽藩や喜連川藩に仕えた者、または帰農した者もいたことが記録されています。特に鳥取藩に仕えた伊王野資壽の子孫である伊王野資年は、明治時代に政治家であり蘭学者の伊王野坦を輩出することとなりました。

伊王野氏の著名な人物

伊王野氏には多くの著名な人物が存在します。伊王野坦は、緒方洪庵に学び、医学者として知られ、自由民権運動にも参与した重要な存在です。戦国時代には、宇都宮尚綱を討った武将・伊王野資宗や、資宗の子で那須氏家臣の伊王野資信も名を馳せました。江戸時代には資信の次男、伊王野資友も武将として知られています。

このように、伊王野氏は長い歴史の中で多くの出来事に関与し、時代を超えてその存在感を維持してきました。

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