伊藤京子 (ピアニスト)

伊藤 京子（いとう きょうこ）

日本のピアニスト、音楽教育者、そして文化プロデューサー。1953年（昭和28年）3月22日、福岡県北九州市に生まれる。現在、大分県別府市を拠点に活動しており、別府アルゲリッチ音楽祭の総合プロデューサーとして国内外から注目されている。

音楽への道と研鑽

幼少より音楽に親しみ、東京芸術大学音楽学部附属音楽高等学校を卒業後、同大学音楽学部器楽科に進み、ピアノを専攻した。在学中の1974年（昭和49年）、第43回日本音楽コンクールピアノ部門において第3位に入賞し、早くからその才能を示した。

翌1975年（昭和50年）からは約10年間にわたりヨーロッパに渡り、さらなる研鑽を積んだ。ミュンヘンに留学後、ピアニストのレオナード・ホカンソン、ヴラド・ペルルミュテール、そして著名なマルタ・アルゲリッチ、パウル・バドゥラ＝スコダといった世界的に著名な指導者や演奏家から直接指導を受ける機会を得た。この間、1977年（昭和52年）には権威あるブゾーニ国際ピアノコンクールで第3位を受賞し、国際的な評価を確立した。1982年（昭和57年）にはフランクフルト音楽大学を卒業し、留学期間を終えた。

演奏活動とプロデュースワーク

帰国後も活発な演奏活動を展開し、1992年（平成4年）には巨匠ジュゼッペ・シノーポリの指揮するフィルハーモニア管弦楽団と共演するなど、国内外のオーケストラとの共演経験も豊富である。

特にマルタ・アルゲリッチとは深い親交を結び、ピアニストとしてだけでなく、企画者としての手腕も発揮するようになる。1994年（平成6年）にはアルゲリッチとともにアルゲリッチ・チェンバーミュージック・フェスティバルを企画し、日本各地で成功を収めた。この活動は、後の別府アルゲリッチ音楽祭へと繋がる重要な契機となった。

教育・文化振興と地域貢献

かつて徳島文理大学音楽学部で助教授を務めるなど、音楽教育にも情熱を注いだ。また、1999年（平成11年）には福岡県春日市のふれあい文化センター芸術文化事業コーディネーターに就任するなど、各地の文化振興にも貢献している。

1998年（平成10年）、大分県別府市において、国際的な音楽祭である別府アルゲリッチ音楽祭が立ち上げられると、その総合プロデューサーに就任した。この音楽祭は、マルタ・アルゲリッチを総監督に迎え、若手育成や地域との連携を重視した独自の理念を持ち、国内外から多くの著名な音楽家や観客を惹きつけている。伊藤は、この音楽祭の成功に不可欠な存在として、企画、運営、広報など多岐にわたる役割を担い、その発展に尽力してきた。

社会貢献活動と受賞歴

クラシック音楽を通じた子供たちの育成にも関心を寄せ、2000年（平成12年）には「おたまじゃくし基金」を設立した。この基金の活動資金を募るため、アルゲリッチとのピアノ・デュオを収録したCD『こどもたちに-友情のデュオ』を発売するなど、音楽活動と社会貢献を結びつけている。

また、2001年（平成13年）に金刀比羅宮の音楽顧問に就任するなど、幅広い分野でその知見を活かしている。地域貢献としては、2009年（平成24年）に故郷である北九州市より特命大使（文化）に委嘱された。

長年の功績に対し、数多くの賞が贈られている。1995年（平成7年）には北九州市民文化賞と国際ソロプチミスト女性栄誉賞を受賞。2001年（平成13年）に新日鉄音楽賞特別賞、2002年（平成14年）に大分合同新聞文化賞を受賞した。さらに、2016年（平成28年）にJASRAC音楽文化賞、2018年（平成30年）に西日本文化賞、そして2024年（令和6年）には邦人として初めて大林財団より第13回大林賞を受賞するなど、その活動は高く評価され続けている。

現在も大分県別府市を拠点に、ピアニスト、そして別府アルゲリッチ音楽祭のプロデューサーとして、精力的に活動している。

受賞歴一覧

1974年：第43回日本音楽コンクールピアノ部門 第3位
1977年：ブゾーニ国際ピアノコンクール 第3位
1995年：北九州市民文化賞
1995年：国際ソロプチミスト女性栄誉賞
2001年：第12回新日鉄音楽賞特別賞
2002年：平成14年度大分合同新聞文化賞
2016年：第3回JASRAC音楽文化賞
2018年：第77回西日本文化賞
* 2024年：第13回大林賞

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