伊藤常足

伊藤常足（いとう つねたり）

伊藤常足は、安永3年12月21日（1775年1月22日）に生まれ、安政5年11月19日（1858年12月23日）に没した、江戸時代後期の国学者、歌人、教育者です。筑前国鞍手（現在の福岡県鞍手郡）の出身で、号を槙家と称しました。通称は魚沖（なおき）です。

生涯

伊藤常足は、古物神社に奉仕する神職の家に生まれました。幼少の頃より学問に励み、儒学を亀井南冥に、国学を本居宣長の門弟である青柳種信に師事しました。35歳を過ぎてから京都周辺に遊学し、伊勢神宮へ参詣するなど見聞を広めました。その後、松阪を訪れて本居大平の門人となり、伴信友や足代弘訓と共に学びました。また、歌人としても才能を発揮し、香川景樹ら当時の第一級の文人たちと交流を深めました。

故郷に戻った常足は、自宅に私塾を開き、国学や和歌を教えることで後進の育成に力を注ぎました。また、桜井文庫の創設にも関与し、地域文化の発展に貢献しました。天保12年（1841年）、68歳の時には、長年の研究の集大成である『太宰管内志』全82巻を完成させ、福岡藩主の黒田長溥に献上しました。この著作は、九州全域の詳細な地誌として、後世に高く評価されています。

常足の家族もまた、それぞれに才能を発揮しました。長男の南華は画家として、次女のゆみは文学者として活躍しました。また、孫の直江も国学者としてその名を残しています。

常足の功績は、没後も長く語り継がれ、大正4年（1915年）には、従五位を追贈されました。

業績

伊藤常足は、国学、歌道、教育の分野で多くの業績を残しました。特に、地誌研究においては、その詳細さと正確さにおいて傑出しており、後世の学者たちに大きな影響を与えました。

『太宰管内志』
九州全域を詳細に記述した地誌であり、その内容は地理、歴史、文化、風俗など多岐にわたります。地域研究における第一級の資料として、現在でも貴重な価値を持っています。
『槙家集』
伊藤家の歌集であり、常足の歌人としての才能を窺い知ることができます。
『百社起源』
神社に関する研究書です。
『古寺徴』
寺院に関する研究書です。

旧宅

伊藤常足の旧宅は、天明6年（1786年）に現在の福岡県鞍手町大字古門に建てられました。現在は復元され、保存されており、福岡県指定史跡となっています。この旧宅は、常足の生涯をしのぶ上で重要な場所となっています。

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