伊藤東涯

伊藤 東涯（いとう とうがい）の生涯と業績

伊藤東涯は、江戸時代中期に活躍した著名な儒学者で、寛文10年4月28日に生まれました。彼は、儒学者の伊藤仁斎を父に持ち、父が設立した私塾・古義堂の二代目としてその教えを受け継ぎながら、新たな発展に尽力しました。彼の名は長胤（ながつぐ）で、字は原蔵・源蔵・元蔵、別号は慥々齋です。母の嘉那は、尾形光琳や乾山の親戚であり、兄弟には同じく儒学者の伊藤介亭や伊藤梅宇、竹里、蘭嵎がいます。

性格と学びの環境

東涯は温厚であったことが知られ、長者としての役割を果たしながら、家族や古義堂の仲間を支えました。父親の遺した著作物の編集・刊行に力を入れ、自らも「訓幼字義」などいくつかの著書を出版しています。その中で、彼は中国語や中国の制度史、儒教の歴史に関する基礎的な研究にも力を注いでいたようです。

また、新井白石や荻生徂徠といった当時の著名な学者たちとも親しい関係を築いていました。

古義堂と家庭

東涯の号は彼自身が名乗ったものであり、古義堂が京都の堀川の東岸に位置していたことに由来しています。私生活においては、加藤氏と結婚して三男を授かりましたが、長男と次男は早くに亡くなってしまいました。三男の善韶（あづまのしょう）だけが古義堂を継ぎ、その伝統を引き継いでいきました。

特筆すべきは、元禄16年に書かれた書状の中で、赤穂事件と関連して赤穂藩から離反した大野知房や伊藤五右衛門兄弟について言及されています。これは、伊藤家と五右衛門の生家との間に親族関係があった可能性を示唆する貴重な記録です。

主な業績

東涯は多くの著書を残しました。代表的なものには、以下のような作品があります。

• - 「制度通」
• - 「訓幼字義」
• - 「用字格」
• - 「論語古義標註」
• - 「古学指要」
• - 「弁疑録」

これらの著作は、儒学の伝統を継承し、さらなる学びの基盤を築くための重要な資料となっています。

晩年と評価

晩年には、彼の研究と教育活動が評価され、大正4年（1915年）には従四位が追贈されました。これは、彼がいかに多くの功績を残したかを示すもので、現在でもその影響は学術界において広く認識されています。

彼の生涯と業績は、江戸時代の儒学の発展とその影響を理解する上で欠かせない重要な要素として、今でも研究が続けられています。

もう一度検索