伊藤正一

伊藤正一：会計学の先駆者、その生涯と業績

伊藤正一（いとう しょういち、1895年5月15日 - 1969年9月15日）は、日本の著名な会計学者であり、ドイツ会計学の分野で先駆的な役割を果たしました。彼は成城大学の学長代行などを務め、教育者としても多大な貢献をしました。

生い立ちと初期のキャリア

伊藤正一は、1895年に高知県高知市で生まれました。1913年に高知商業学校（現在の高知市立高知商業高等学校）を卒業後、東京高等商業学校（現在の一橋大学）に進学し、1917年に卒業。さらに1920年には同校の専攻部を卒業しました。学業を終えた伊藤は、三菱合資会社に入社し、その後三井物産へ移籍。オランダ領東インドやハワイでの勤務を経験しました。また、青山学院で教鞭を執るなど、多様なキャリアを積みました。

研究者としての道

1926年、伊藤正一は高岡高等商業学校（現在の富山大学経済学部）の教授に就任し、研究者としての道を歩み始めます。1927年からは2年間、文部省在外研究員としてドイツとフランスに留学し、会計学を深く学びました。この留学経験が、彼の専門分野であるドイツ会計学研究の基礎を築きました。

実務と研究の両立

帰国後、伊藤は1931年に横浜専門学校（現在の神奈川大学）の教授に就任。1938年には日本通運に入社し、同社の会計組織の確立に尽力するなど、実務家としても活躍しました。その後、1950年に成城大学教授に就任し、成城大学経済学部長、成城大学学長事務取扱、成城大学学長臨時代理などを歴任しました。

ドイツ・マルク貸借対照表研究の第一人者

伊藤正一の専門は会計学であり、特にドイツ・マルク貸借対照表の研究において、日本における第一人者として知られています。彼の研究は、当時の会計学界に大きな影響を与えました。1961年には、『ドイツ・マルク貸借対照表の研究 : その会計的側面よりするもの』を成城大学経済学会から発表しています。

後進の育成と晩年

1964年、伊藤正一は成城大学を定年退職し、その後は千葉商科大学教授、1966年からは駒澤大学教授として教鞭を執りました。後進の育成に尽力する傍ら、研究活動も続けました。1969年9月15日、世田谷区砧地域の自宅で急逝。享年74歳でした。

著作一覧

伊藤正一は、多数の著書を通じて会計学の普及と発展に貢献しました。以下に主な著書を挙げます。

『商業簿記講話』博文館 1922年
『現代商業講話』日本評論社 1923年
『通俗現代商業講話』日本評論社出版部 1923年
『現代商工実務の学び方 商業篇』日本評論社 1924年
『現代商工実務の学び方 工業篇』（土田清次と共著）日本評論社 1924年
『商業簿記要網』博文館 1932年
『商業算術提要』（久武雅夫と共著）巌松堂書店 1934年
『運送業会計』東洋出版社 1935年
『商業簿記概要』 巌松堂書店 1935年
『工業原価計算及び会計』巌松堂 1937年
『受験参考簿記計算問題精解』巌松堂書店 1948年
『簿記計算問題精解』巌松堂書店 1951年
『簿記会計の一般的基礎』税務経理協会 1953年
『新らしい税務簿記』中央経済社 1953年
『貸借対照表の特殊研究』税務経理協会 1953年
『簿記論』税務経理協会 1957年
『ドイツ・マルク貸借対照表の研究 : その会計的側面よりするもの』成城大学経済学会 1961年
『大学入門簿記』税務経理協会 1962年

訳書
ニコルソン, ロールバッハ他著『原価計算論』巌松堂書店 1927年
レオン・ゴンベルグ著『会計学方法論』巌松堂書店 1944年

伊藤正一は、会計学の発展に大きく貢献しただけでなく、多くの学生を育て、実務の世界でもその知識を活かしました。彼の業績は、今日の会計学研究においても重要な基盤となっています。

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