伊藤熹朔

伊藤熹朔の生涯と業績

伊藤熹朔（いとう きさく、1899年8月1日 - 1967年3月31日）は、東京に生まれた日本の舞台美術家であり、美術監督として知られています。彼は、舞台美術の分野において多くの革新をもたらし、特に映画や演劇界における重要な役割を果たしました。彼を称えるために制定された「伊藤熹朔賞」は、その功績を讃えるものです。

人物・来歴

伊藤は東京市神田区にて、建築家の四男として誕生しました。彼の家族背景には舞踊家の兄や演劇関係の弟がいるなど、芸術に深い関わりを持つ家庭環境がありました。旧制東京美術学校に入学し、西洋画科で学んでいた彼は、在学中から土方与志の模型舞台研究所に参加し、舞台美術に対する情熱を燃やしていきました。卒業後の1924年には、シェイクスピアの『ジュリアス・シーザー』で初めて舞台美術家としての職を得、以後、築地小劇場や新協劇団など、多くの舞台美術を手がけることになります。彼は舞台美術の新たなスタイルや演出を模索し、数々の成功を収めました。

1930年には、六人会を結成し、若手の舞台美術家の育成に注力しました。彼の指導によって多くの後進が育ち、この分野に貢献することになります。

映画界への進出

伊藤は舞台だけでなく映画の美術監督としても活動し、1950年代には特に多くの映画作品に携わりました。代表作には、1956年のイヴ・シャンピ監督による日仏合作映画『忘れえぬ慕情』や、1959年公開のジョン・ヒューストン監督の『黒船』があります。これらの作品は、彼の国際的な活動を印象づけるものとなり、多くの映画ファンや批評家に高く評価されました。

受賞歴と評価

彼はその業績に対して数多くの賞を受賞しており、特に1947年には文部大臣賞、1949年には毎日演劇賞、1950年には日本芸術院賞を受賞しています。さらに、1962年には菊池寛賞、1964年には毎日文化賞を受賞し、その才能と努力が広く認められました。

晩年と家族

1967年に亡くなるまで、彼は舞台美術の発展に多大な影響を与えた人物として記憶されています。その墓所は染井霊園にあります。彼の娘、伊藤弘子も女優として活動し、俳優の長谷川哲夫と結婚後、女優業を引退。さらに孫の上原真美も女優として舞台で活躍しています。このように、熹朔の芸術的な遺産は家族に受け継がれています。

書籍とフィルモグラフィ

また伊藤は著名な書籍も執筆しており、その中には『舞台装置の研究』や『移動演劇の研究』などがあり、舞台美術の知識と技術を広めることに貢献しています。彼が手掛けた映画作品のリストも多岐にわたり、各時代の日本映画界を支える重要な役割を果たしました。

伊藤熹朔の功績は、日本の舞台美術と映画にとって、今もなお色あせることのない重要な基礎を築いたと言えるでしょう。

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