伊藤裕作

伊藤裕作は、1950年2月25日に三重県津市芸濃町で生まれました。彼は作家、風俗ライター、そして歌人という多岐にわたる顔を持つ人物です。三重県立津高等学校を卒業後、彼は演劇界の鬼才・寺山修司に強い憧れを抱き、早稲田大学教育学部社会科に進学しました。大学では7年をかけて卒業し、在学中は早稲田大学短歌会に所属して短歌創作に励みました。

大学卒業後、伊藤は明石賢生が主宰する自販機本出版社「エルシー企画」に出入りするようになり、そこで風俗を主なテーマとした文筆活動を開始しました。この時期から彼は、社会の裏側に潜む人々の生活や感情に深く関心を抱き、独自の視点でそれらを捉えるようになりました。その後、法政大学大学院に社会人入学し、戦後の娼婦小説に関する研究に取り組みました。彼は『娼婦学ノート』として研究成果をまとめ、修士論文『戦後の娼婦小説の系譜と寺山修司の娼婦観』を執筆。国際日本学インスティテュートの修士課程を修了しました。この修士論文は、後に『私は寺山修司・考　桃色篇』として出版されました。

60歳を過ぎてからは、親鸞聖人の教えを学び始め、2013年3月には名古屋にある同朋大学別科を2年かけて修了しました。現在も真宗高田派の教学を月1回、高田短大「仏教専門講座」で学んでいます。彼の探求心は、風俗の世界から宗教へと広がり、その知的な好奇心は衰えることを知りません。

また、伊藤は演劇にも深い関わりを持ち、流山児祥、桃山邑、坂手洋二といった劇作家・演出家たちと親交があります。彼は、彼らの芝居を故郷である津市で上演する活動にも積極的に関わっており、2016年には、東日寺境内での水族館劇場による小屋掛け芝居『この丗のような夢　パノラマ島綺譚外傳』や、芸濃町総合文化センターホールでの燐光群公演『天使も嘘をつく』の勧進元を務めました。その後も、2018年には水族館劇場の『望郷オルフェー終わりなき神話の涯に―』や、シアターRAKU公演『十二夜』の勧進元としても活躍しました。これらの活動を通して、地域文化の振興にも大きく貢献しています。

さらに、伊藤は2018年末から2019年初めにかけて、ピースボートで世界一周の旅に出ました。そして、2019年には水族館劇場の公演にも出演するなど、その活動範囲は非常に多岐にわたります。

著書としては、『イヴ伝説』、『フー族の姫』といった小説から、『シャボン玉伝説』のような短歌集、『ナイショナイショ　SM嬢のとっておきの話』や『ソープ嬢のとっておきの話』のような風俗に関するノンフィクション作品まで、幅広いジャンルを手掛けています。自伝的小説『1970年20歳』や、『ドキュメント戦後「性」の日本史』、そして研究成果をまとめた『娼婦学ノート』や『私は寺山修司・考　桃色篇』など、彼の知的な探求心と社会への深い関心を示す作品も多数あります。近年では、『風俗ルポ　昭和末年のトルコロジー』、『愛人バンクとその時代』、『寺山修司という生き方　望郷篇』、『風俗のミカタ1968－2018　極私的風俗50年の記録』、『歌集　心境短歌（わたくしたんか）　水、厳かに』などを発表しています。これらの作品は、彼の多岐にわたる興味と、それを深く掘り下げる執筆活動の軌跡を示しています。

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