伊賀局 (篠塚重広の娘)

伊賀局（いがのつぼね）

伊賀局は、生年不詳ながら、元中元年/至徳元年10月13日（1384年11月26日）に没したとされる、南北朝時代の女性です。勇女として知られ、その生涯は伝説的な逸話に彩られています。

生涯

伊賀局は、篠塚重広の娘として生まれました。後醍醐天皇の女院である阿野廉子に女官として仕え、その才覚を発揮しました。その後、楠木正成の三男である楠木正儀と結婚し、武家の妻として新たな人生を歩むことになります。

逸話

室町時代の説話集『吉野拾遺』には、伊賀局に関するいくつかの興味深い逸話が記録されています。

幽霊との遭遇：
正平2年/貞和3年（1347年）6月10日、伊賀局は藤原基任の幽霊に遭遇したとされています。この出来事は「伊賀局化物ニ遭フ事」として『吉野拾遺』に記されており、当時の人々が抱いていた幽霊や怪異に対する畏怖の念を垣間見ることができます。

吉野川での活躍：
翌年の正平3年/貞和4年（1348年）1月24日、北朝方の武将高師直が吉野行宮を攻撃した際、後村上天皇は母である廉子と共に賀名生行宮へ落ち延びることになります。この時、伊賀局も一行に付き従いました。吉野川に差し掛かった際、橋が崩落しているという危機的な状況に陥ります。しかし、伊賀局は驚くべき怪力を発揮し、周囲の桜や松の枝を次々と折り、川に投げ込んで即席の橋を架けました。そして、自らが廉子を背負って対岸へと渡り、一行を救ったとされています。この逸話は「同局芳野川ニテ高名ノ事」として『吉野拾遺』に詳しく記されており、伊賀局の類まれなる勇気と行動力を物語るものとして語り継がれています。

参考文献

伊賀局に関する主な参考文献は以下の通りです。

『吉野拾遺』：伊賀局の逸話が記録された説話集です。
『古人の独り言』（渡辺かぞい著 文芸社 2003年）：伊賀局について考察されている書籍です。

関連人物

* 楠木正勝：
楠木正儀の嫡男です。正勝の母親が誰であったかは記録に残っていませんが、正儀の正室である伊賀局であった可能性が指摘されています。

まとめ

伊賀局は、南北朝時代という動乱の時代に、女官、武家の妻として、その勇猛さと行動力で名を残した女性です。特に、吉野川での逸話は、彼女の怪力ぶりと、主君を助けるための大胆な行動をよく表しており、後世に語り継がれることとなりました。

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