伊賀山正光

伊賀山正光（いがやま まさみつ）

生涯

伊賀山正光は、1905年（明治38年）8月25日に秋田県秋田市で生まれました。本名は伊賀山正徳といいます。旧制秋田県立秋田中学校（現在の秋田県立秋田高等学校）を卒業後、東京に移り、明治大学に進学しました。その後、日本大学法文学部美学科（現在の日本大学藝術学部）に転籍し、在学中から映画界に足を踏み入れました。

1925年（大正14年）、国際活映巣鴨撮影所が製作した内田吐夢監督の『義血』で助監督を務めたことが、彼の映画キャリアの始まりです。同作には、後に特撮の神様と呼ばれる円谷英二が撮影技師として参加しており、この作品での経験は伊賀山の映画観に大きな影響を与えました。

1927年（昭和2年）に日本大学を卒業後、タカマツ・アズマプロダクション吾嬬撮影所に入社しましたが、同社はすぐに活動を停止しました。その後、京都の勝見庸太郎プロダクションに移籍し、1929年（昭和4年）には、勝見監督の『血の船』で脚本家としてクレジットされました。

1930年（昭和5年）、勝見プロが活動を停止した後、内田吐夢の紹介で日活太秦撮影所に入社します。日活では、内田のほか、村田実、阿部豊、田坂具隆、渡辺邦男といった名だたる監督たちに師事しました。伊賀山は、1934年（昭和9年）に『野の光』で監督デビューを果たすまで、伊奈精一の専属助監督として経験を積みました。その後、日活多摩川撮影所に異動し、1942年（昭和17年）には大日本映画製作（大映）に勤務しました。

第二次世界大戦終結後、大映東京撮影所に復帰し、企画者として活躍しました。1947年（昭和22年）には、西村元男監督のデビュー作『花嫁の正体』をプロデュース。1949年（昭和24年）には、吉村廉監督の『検事と女看守』の企画も担当しました。その後、ラジオ映画に製作部長として迎えられ、自らも監督として『海魔陸を行く』を制作しました。

1951年（昭和26年）には、新映画で『湯の町情話』と『紅涙草』を監督し、翌年には東映と監督契約を結びました。東映では、改名後の東映東京撮影所で『母の罪』などを監督しました。

1957年（昭和32年）に公開された『若獅子大名』から、「伊賀山正光」と改名しました。1963年（昭和38年）の『恋は神代の昔から』を最後に劇場用映画から離れ、その後はテレビ映画の監督として活躍しました。

1962年（昭和37年）には『特別機動捜査隊』で初めてテレビ映画を手がけ、その後、『文吾捕物帳』まで、多くのテレビドラマを監督しました。テレビ映画の世界でも、その職人的な腕を高く評価されました。

2001年（平成13年）10月29日、伊賀山正光は96歳でその生涯を閉じました。

映画監督としての特徴

伊賀山正光は、助監督時代から幅広いジャンルの作品に携わり、その経験を通じて培った確かな演出力が、彼の作品の特徴です。日活時代は、現代劇を中心に多くの作品を手がけましたが、東映に移籍してからは時代劇も多く手がけました。

特に、伊賀山が監督した作品には、人間ドラマを丁寧に描いたものが多いです。登場人物の心情を繊細に表現し、観る者の心を掴む作品を数多く残しました。また、テレビ映画の分野でも、その手腕を発揮し、数々の人気ドラマを世に送り出しました。

伊賀山正光は、映画監督として、その生涯を通して日本の映画界に大きく貢献しました。彼の作品は、今もなお多くの人々に愛され、語り継がれています。

主な作品

映画
『野の光』(1934)
『海魔陸を行く』(1950)
『湯の町情話』(1951)
『紅涙草』(1951)
『母の罪』(1952)
『若獅子大名』(1957)
『恋は神代の昔から』(1963)
テレビドラマ
『特別機動捜査隊』(1962-1977)
『鉄道公安36号』(1963-1967)
『プレイガール』(1969-1976)
『非情のライセンス』(1973-1980)
『文吾捕物帳』(1981-1982)

その他

伊賀山正光は、そのキャリアの中で数多くの作品に携わり、その功績は日本の映画史に深く刻まれています。彼の監督作品は、様々な形で後世に伝えられています。

参考文献
『秋高百年史』、秋田県立秋田高等学校同窓会、1973年

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