タカマツ・アズマプロダクション

タカマツ・アズマプロダクション：幻の映画製作会社

タカマツ・アズマプロダクションは、1925年から1927年という短い期間に存在した、東京の映画製作会社です。設立者は、労働運動家としても知られる高松豊次郎。彼は、映画を社会運動の手段として捉え、独自の映画製作を目指しました。

設立と吾嬬撮影所

高松豊次郎は、以前から映画を用いた啓蒙活動や労働運動に携わっていました。その経験を活かし、1925年に「高松豊次郎プロダクション」を設立。南葛飾郡吾嬬町に「タカマツ・プロダクション吾嬬撮影所」を建設し、本格的な映画製作を開始しました。この撮影所は、現在の東京都墨田区京島3丁目に位置していました。

作品と才能の発掘

設立第一作は、高松操監督による時代劇『義憤の血煙』。この作品では、当時無名だった脇役俳優、室町次郎を主演に抜擢しました。室町は後に日活に入社し、大河内傳次郎としてスターダムを駆け上がります。タカマツ・アズマプロダクションは、人材発掘の面でも貢献したと言えるでしょう。

その後も、『燃ゆる情魂』など話題作を次々と発表。近藤伊与吉や小谷三郎など、才能ある映画人を輩出しました。しかし、わずか1年半という短い活動期間で、23本もの無声映画を製作し、映画史にその名を刻みました。

短命に終わった理由

設立からわずか2年で活動を停止した理由は定かではありません。しかし、当時の映画業界は競争が激しく、独立プロは経営が安定しにくい状況でした。また、高松豊次郎自身の思想が、商業主義と相容れない部分もあったのかもしれません。

その後

製作活動停止後、所属していた監督たちは、それぞれの道を歩みました。高松操は河合映画製作社へ、友成用三は松竹下加茂撮影所へ移籍。近藤伊与吉は阪東妻三郎プロダクションへ、江川宇礼雄は松竹蒲田で俳優として活躍しました。

吾嬬撮影所は、その後も貸しスタジオとして利用されましたが、1945年の東京大空襲で焼失。現在は住宅地となっています。

忘れられた映画会社の再評価

タカマツ・アズマプロダクションは、短命であったため、その存在は忘れられがちです。しかし、労働運動家が設立した映画会社として、また、大河内傳次郎を発掘した会社として、映画史における意義は大きいと言えるでしょう。

わずか2年足らずの活動期間に、23本もの映画を製作したタカマツ・アズマプロダクション。その作品は、残念ながら多くが現存していませんが、その精神は、日本の映画史に確かに刻まれています。

関連事項
活動写真資料研究会 （高松豊次郎）
阪東妻三郎プロダクション （阪東妻三郎）
マキノ・プロダクション （マキノ省三）
連合映画芸術家協会 （直木三十五）

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