伊達村豊

伊達村豊：生涯と業績

伊達村豊は、江戸時代前期から中期にかけて活躍した外様大名であり、伊予国伊予吉田藩の第3代藩主です。幼名は金之助、のちに宗春と名乗りましたが、後に村豊と改名しました。

誕生から藩主就任まで

天和2年(1682年)、宇和島藩士伊達宗職の次男として生まれました。母は里見氏です。12歳の時、従兄にあたる吉田藩主・伊達宗保の養子となり、吉田藩の第3代藩主を継承しました。将軍徳川綱吉への御目見、叙任を経て、藩主としての道を歩み始めます。

元禄赤穂事件への関与

元禄14年(1701年)、霊元上皇の院使である清閑寺熈定の饗応役を務めた村豊は、同時に浅野長矩が勅使の饗応役を務めるという状況にありました。浅野長矩が吉良義央に刃傷に及んだ際、村豊は現場に居合わせ、浅野を取り押さえる役割を担いました。この事件において、村豊は自身の役割を無事に全うし、高い評価を得ました。

藩主としての治世

宝永元年(1704年)には将軍家法事の公家衆饗応、宝永6年(1709年)には公家衆御門跡饗応、宝永7年(1710年)には東山智恩院御門跡の饗応など、数々の重要な公家饗応を歴任しました。これらの役割を通じて、村豊は朝廷との良好な関係を築き、藩の地位向上に貢献したと考えられます。

吉田藩主として、村豊は領地経営にも力を注ぎました。宝永元年(1704年)に初めて伊予吉田に入国し、その後は隔年で参勤交代を行いました。享保17年(1732年)の享保の大飢饉では、藩内に甚大な被害が出ましたが、村豊は幕府からの借財を行いながらも、年貢の免除や備蓄米の放出など、効果的な対策を講じ、餓死者を出さない成果をあげました。これは、餓死者多数を出した他藩と比較して際立っています。

晩年と死後

正徳3年(1713年)には官位を和泉守に、享保10年(1725年)には若狭守に改めました。この頃、諱を宗春から村豊に変えたとされています。正徳5年(1715年)には、伊香保温泉で湯治を行いました。享保20年(1735年)には、嫡男である村信の左京への就任を願い出て許可されています。元文2年(1737年)6月30日、江戸藩邸にて死去しました。法名は沢翁真龍大淵院です。

村豊の死後、跡を継いだ村信は、父が築き上げた藩政を継承していきました。村豊の44年にわたる藩主としての治世は、『藤蔓延年譜』に詳細に記録されています。

人物像と評価

村豊は、勅使饗応を完璧にこなした人物として高く評価されています。膨大な費用を投じて、勅使や供の公家侍への饗応に心を尽くしたと伝えられています。地元では「勤皇のお殿様」、「元禄赤穂事件のお殿様」として有名です。その功績は、村豊自身の能力だけでなく、家老荻野七郎兵衛ら江戸詰め家臣の働きによるところも大きかったと言われています。

村豊は、朝廷の故事先例に通じており、吉良家や有力な商人とも良好な関係を築いていました。これらの関係が、藩の安定と発展に大きく寄与したと考えられます。

系譜

父: 伊達宗職
母: 里見氏
養父: 伊達宗保
正室: 青山忠重の娘
次男: 伊達村信
三男: 上杉義枝（上杉知義の養子）

その他、複数の子女がいました。

遺品

村豊の遺品として、三幅対山水画「西王母と牡丹図」が残されています。これは村豊自身の直筆による水墨画です。

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