伊那電気鉄道デキ20形電気機関車

伊那電気鉄道デキ20形電気機関車

伊那電気鉄道デキ20形電気機関車は、1929年（昭和4年）に伊那電気鉄道が新製した直流用電気機関車です。伊那電気鉄道は現在のJR東海飯田線の一部にあたる路線を運営していました。この機関車は、後に国有化され、国鉄のED33形、さらにED26形へと改称されました。

概要

1929年11月、芝浦製作所が主要機器を、汽車製造が車体を製造し、デキ20形20号機と21号機の2両が誕生しました。当時、伊那電気鉄道にはデキ1形やデキ10形といった電気機関車が既に存在していましたが、これらは運転室前後に機械室（ボンネット）を備えた凸形車体でした。それに対し、デキ20形は国鉄のED11形やED14形を基本としたデッキ付きの箱形車体を採用しています。

外観上の特徴として、前後妻面の中央に乗務員扉があり、その両脇には砂箱への砂補充口が上向きに設置されています。また、当時としては珍しい150kW級の主電動機を4基搭載しており、1両あたりの定格出力は600kWと、デキ1形やデキ10形と比較して約2倍の出力を持つ強力な機関車でした。さらに、重連総括制御装置を備えていました。

集電装置としては、菱形パンタグラフを1両あたり2基搭載し、連結器は上作用式の並形自動連結器を前後エンドに装備しています。連結器周辺には、空気制動用繋ぎ管に加え、重連運転時に使用する各種引き通し線が備えられていました。

導入後の変遷

1943年（昭和18年）、伊那電気鉄道が戦時買収により国有化された際、デキ20形も鉄道省籍へ編入されました。当初は原番号・原形式のまま運用されましたが、1952年（昭和27年）の車両称号規程改正により、ED33形ED33 1とED33 2に改称されました。さらに1961年（昭和36年）には、ED26形（2代）ED26 11とED26 12に再度改称されました。

国有化後、旧伊那電気鉄道線の架線電圧は1,200Vから1,500Vに昇圧されました。デキ20形もこの昇圧に対応するため改造を受けましたが、その際、一部の主要機器は国鉄制式機器に換装され、重連総括制御装置は撤去されました。

デキ20形は、導入から廃車まで伊那松島機関区に所属し、飯田線で運用されました。国鉄のED11形やED14形を模して設計・製造されたこの機関車は、「買収電気機関車」としては最も遅くまで国鉄に在籍しました。しかし、1973年（昭和48年）に2両とも廃車となり、その後解体され、現存する車両はありません。

関連項目

飯田線
国鉄ED33形電気機関車
* 国鉄ED26形電気機関車

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