伊香保ケーブル鉄道

伊香保ケーブル鉄道：温泉郷と榛名山を結んだ短い歴史

群馬県渋川市（旧伊香保町）に存在した伊香保ケーブル鉄道は、伊香保温泉と榛名山を結ぶケーブルカー路線でした。1929年9月6日、関東鋼索鉄道によって開業、その後伊香保ケーブル鉄道と社名を変更し、地域住民の生活や観光に貢献しました。しかし、わずか37年の歴史に幕を閉じます。その興亡をたどることで、日本のモータリゼーションと地方交通の変化を垣間見ることができます。

開業と華麗なる初期

伊香保ケーブル鉄道は、製紙王として知られた大川平三郎氏らの尽力により誕生しました。当時としては非常に長い2090mの傾斜を誇り、愛宕山鉄道鋼索線に次ぐ長さでした。伊香保温泉へのアクセスは、東武伊香保軌道線（1956年廃止）とバスを乗り継ぐ必要がありました。

開業当初は、伊香保温泉を訪れる観光客や、榛名山の自然を楽しむ人々にとって貴重な交通手段でした。車両は最新技術が導入され、快適な運行を支えていました。

戦時下の休止と戦後の再開

太平洋戦争が始まると、伊香保ケーブル鉄道は「不要不急」の路線として1944年に休止、レールは撤去されました。戦後、18年ぶりに1961年に運転を再開しますが、モータリゼーションの波に乗り遅れ、利用客は減少の一途をたどります。

衰退と廃止

決定打となったのは、1962年10月の伊香保榛名有料道路（1981年に群馬県道33号渋川松井田線として無料開放）の開通でした。自動車の普及により、ケーブルカーの利用者は激減。わずか5年の短い復活期間を経て、1966年12月19日、伊香保ケーブル鉄道は廃止されました。

戦後車両と技術

1961年の運行再開後には、日立製作所製の車両が導入されました。この車両のデザインは、同社製の六甲ケーブル（兵庫県）や八栗ケーブル（香川県）の車両と酷似しており、「いかほ」「はるな」の愛称がつけられていました。これは、当時の技術が共有されていたことを示す貴重な事例と言えるでしょう。

路線データと運行概要

歴史的概要

1927年7月8日：関東鋼索電気鉄道に対し鉄道免許状下付
1928年7月2日：関東鋼索鉄道株式会社設立
1929年9月6日：関東鋼索鉄道により開業
1934年2月12日：伊香保ケーブル鉄道に社名変更
1944年2月11日：休止
1961年8月13日：運行再開
1963年5月25日：東京急行電鉄に買収
1966年7月10日：休止
* 1966年12月19日：廃止許可

結論

伊香保ケーブル鉄道は、時代の変化の中で短くも華麗な歴史を刻みました。その存在は、地方の交通手段の変化、そしてモータリゼーションが地方社会にもたらした影響を象徴的に示しています。廃線となった現在でも、その歴史は人々の記憶の中に、そして記録の中に生き続けています。

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