会津鉄道AT-300形気動車

会津鉄道AT-300形気動車

会津鉄道AT-300形気動車は、1999年（平成11年）にJR東日本から譲渡されたキハ30形気動車を改造して誕生した、会津鉄道の観光用気動車です。1両のみが改造され、2009年（平成21年）まで運用されました。この車両は、側窓が撤去された開放的な構造を持つ、日本初の自走式トロッコ車両として知られています。

概要

1990年代後半、会津地方への観光客輸送は景気低迷の影響で減少傾向にありました。会津鉄道は、この状況を打開するために、沿線の美しい景観を活かしたトロッコ車両の導入を計画しました。しかし、当時の経営状況から、自力での観光車両導入は困難でした。そのため、導入費用約4,300万円は、全額日本宝くじ協会からの助成金で賄われました。

改造のベースとなったのは、1996年（平成8年）に廃車となったJR東日本高崎運転所（現・ぐんま車両センター）のキハ30 18です。この車両は新潟鐵工所でトロッコ車両に改造され、1999年（平成11年）4月29日から運転を開始しました。AT-300形は、お座敷気動車や展望気動車などと連結して運用されましたが、老朽化のためAT-350形に後を託し、2009年（平成21年）に引退しました。

構造

車体

AT-300形は、種車のキハ30 18の車体を大幅に改造しています。後位側（会津高原側）の客用扉の左右1か所と運転席を残し、すべての側窓と客用扉の左右2か所が撤去され、開放的な構造に生まれ変わりました。乗客の安全のため、2段の手すりが設置されています。外装は黄色を基調とした塗装が施されました。客室内には、4人掛けボックスシートが15組、運転席を向いた2人掛け座席が3組配置されています。運転席は全室式から左隅式に改造されましたが、乗務員扉は左右両側とも残されています。後位側の運転席直後には、車椅子スペースが設けられています。

走行装置

走行装置は種車のものがそのまま流用されています。エンジンは、JR時代に換装されたカミンズ製DMF14HZディーゼルエンジン（定格出力184kW/2,000rpm）を1基搭載しています。このエンジンからの動力は、新潟コンバーター製のDF115A液体式変速機を介して台車に伝達されます。前位側の台車は動力台車のDT22C、後位側は付随台車のTR51Bです。制動装置は、DA1A自動空気ブレーキが採用されています。

車歴

AT-300形は、1999年4月29日に運行を開始しました。初年度は、雨天時に乗客が退避できるよう、AT-300形と塗装を合わせたAT-150形と2両編成で運用されました。その後、2000年7月からはお座敷改造されたAT-103と2両編成で「お座トロ列車」として、2003年からは展望車両として導入されたAT-400形を加えた3両編成の「お座トロ展望列車」として、会津若松駅 - 会津高原尾瀬口駅間を運行しました。2003年7月12日・13日には、阿武隈急行に貸し出され、保原駅 - 槻木駅間で各日2往復の運転も行われました。

2009年、AT-350形の導入に伴い引退し、芦ノ牧温泉駅に保存されています。

参考文献

寺田祐一『私鉄気動車30年』JTBパブリッシング、2006年。ISBN 4-533-06532-5。
『鉄道ピクトリアル』通巻582号「新車年鑑1999年版」（1999年10月・電気車研究会）
「1998年のニューフェイス 民鉄車両編」 pp. 13-20
藤井信夫、大幡哲海、岸上明彦「各社別車両情勢」 pp. 91-107
会津鉄道（株）運輸部 佐藤啓一「会津鉄道 AT300形」 pp. 111
「車両諸元表」 pp. 174-175
「1998年度車両動向」 pp. 176-185
『鉄道ピクトリアル』通巻738号「鉄道車両年鑑2003年版」（2003年10月・電気車研究会）
会津鉄道（株）運輸部 佐藤啓一「会津鉄道 AT-400形」 pp. 135-137
『鉄道ピクトリアル』通巻742号「特集 キハ35・45系」（2004年2月・電気車研究会）
「国鉄通勤型・近郊型 ディーゼル動車のあゆみ」 pp. 10-32
「キハ35・45系　車歴表」 pp. 64-74
『鉄道ピクトリアル』通巻840号「鉄道車両年鑑2010年版」（2010年10月・電気車研究会）
岸上 明彦「2009年度民鉄車両動向」 pp. 116-142
会津鉄道（株）運輸部運輸課 川原田宏「会津鉄道AT350形」 pp. 143-144
「各社別新造・改造・廃車一覧」 pp. 212-225

関連項目

* 会津鉄道AT-400形気動車

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