会田雄次

会田雄次：イタリア・ルネサンス研究者と保守派論客の生涯

会田雄次は、1916年京都市に生まれました。父は動物学者の会田龍雄氏です。京都府立第一中学校、第三高等学校を経て、京都帝国大学文学部史学科に進み、1940年に卒業、同大学院に進学しました。

大学院在学中の1942年には、京都帝国大学文学部副手となり、龍谷大学予科でも講師を務めました。しかし、同年、戦局の悪化によりビルマ戦線へ応召。歩兵一等兵として従軍し、イギリス軍の捕虜となりました。ラングーンでの捕虜生活は、1947年の復員まで続きました。この過酷な体験は、後に彼の著書『アーロン収容所』として世に出ることになります。

戦後、会田は神戸経済大学（現神戸大学）予科教授、神戸大学文理学部助教授を経て、1952年に京都大学人文科学研究所教授に就任。1962年には学位論文『ルネサンスの美術と社会』で文学博士号を取得しました。イタリア・ルネサンスを専門とする研究者として活躍し、1979年に京都大学を定年退官、名誉教授となりました。1997年、肺炎のため81歳で永眠しました。

会田の専門はイタリア・ルネサンス研究ですが、中年にさしかかると日本人論、日本文化論へと研究の幅を広げました。特に、ルース・ベネディクトの日本論を批判した『日本人の意識構造』は大きな注目を集めました。

その著作は多岐に渡り、『会田雄次著作集』（全11巻）にまとめられています。ルネサンス研究の成果に加え、日本人の国民性や文化、歴史を多角的に考察した論考、そしてビルマでの捕虜体験を記した『アーロン収容所』など、幅広いテーマを扱っています。歴史学、文化論の分野で重要な貢献を果たしたと言えるでしょう。

彼は保守派の論客としても知られており、日本の社会や文化について独自の鋭い視点を提示しました。多くの著作を通して、日本の伝統や文化を深く見つめ直し、現代社会への示唆に富む考察を展開しています。

会田の業績は、単なる学問的成果にとどまりません。彼の著作は、日本人のアイデンティティや文化、そして歴史に対する理解を深める上で、重要な役割を果たしています。また、戦時中の捕虜体験は、戦争の残酷さと平和の尊さを改めて認識させるものです。

会田雄次という人物は、学問、思想、そして戦争体験という多様な側面を有する、複雑で魅力的な存在でした。彼の生涯と業績は、後世に長く語り継がれるべきものです。彼の著作を通して、私たちは日本人の歴史と文化、そして人間の存在について、深く考えさせられるでしょう。

主な著作物

『アーロン収容所』
『日本人の意識構造』
『日本の風土と文化』
『ルネサンスの美術と社会』
『会田雄次著作集』（全11巻）

受賞・栄典

1988年：京都市文化功労者

会田雄次の業績は、学術分野だけでなく、日本社会全体の文化や思想に大きな影響を与え続けました。彼の思想は、現代においてもなお、私たちに多くの示唆を与えてくれます。

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