伝香寺

伝香寺：歴史と文化が息づく奈良の寺院

奈良県奈良市に位置する伝香寺は、律宗に属する由緒ある寺院です。山号はなく、本尊は釈迦如来です。境内には、奈良三名椿の一つに数えられる散り椿があり、花びらが一枚ずつ散る様子は、訪れる人々の心を癒します。東大寺開山堂の糊こぼし、白毫寺の五色椿とともに、奈良を代表する椿として知られています。

歴史：鑑真和上の弟子から筒井氏の菩提寺へ

伝承によると、伝香寺は鑑真和上の弟子である思託律師によって宝亀2年（771年）に開創されました。当初は実円寺と呼ばれていました。その後、天正13年（1585年）、戦国武将・筒井順慶の母である芳秀宗英尼が、順慶の菩提を弔うため、正親町天皇から勅許を得て、唐招提寺の泉奘長老を招き、寺を再興し、伝香寺と改名しました。以来、筒井氏の菩提寺として大切に護られてきました。現在も残る本堂は、この再興時に建立されたものです。

境内：歴史的建造物と貴重な文化財

伝香寺の境内には、数多くの歴史的建造物と文化財が保存されています。

本堂（重要文化財）：天正13年（1585年）再興時に建立された寄棟造・方三間の建物で、本尊釈迦如来坐像が安置されています。
表門（奈良県指定有形文化財）：天正年間（1573年～1593年）に築かれた表門は、当時の建築様式をよく伝えています。
地蔵堂、順慶堂、弁天堂、庫裏：これらの建物も、寺院の歴史を物語る重要な建造物です。
いさがわ幼稚園: 寺院に隣接して幼稚園が併設されています。

貴重な文化財：国宝・重要文化財の宝庫

伝香寺は、数多くの貴重な文化財を所蔵しています。

木造地蔵菩薩立像・像内納入品（重要文化財）：鎌倉時代に制作されたとされるこの地蔵菩薩立像は、裸形着装像という独特の様式で造られており、別名は「はだか地蔵尊」と呼ばれています。像内からは、木造薬師如来坐像や経巻などの納入品が発見され、これらも重要文化財に指定されています。
木造聖徳太子（南無仏太子）立像（奈良県指定有形文化財）：嘉元2年（1304年）造立の聖徳太子立像は、島左近が筒井家に奉納したものです。
木造釈迦如来坐像（奈良市指定有形文化財）：天正13年（1585年）造立の本尊で、京の大仏の試作仏と伝えられています。
絹本著色筒井順慶像（奈良市指定有形文化財）：筒井順慶を描いた貴重な絵画です。
* 伝香寺旧蔵の文化財：かつて伝香寺が所蔵していた文化財の中には、現在、唐招提寺が所蔵する『南贍部洲大日本国正統図』（重要文化財）などがあります。

アクセス：交通機関を利用して

伝香寺へのアクセスは、奈良交通バス（中循環外回り）「本子守町」バス停下車徒歩1分、近鉄奈良駅7-S出口より徒歩5分、JR大和路線奈良駅東口より徒歩9分と便利です。

まとめ

伝香寺は、歴史と文化が深く息づく奈良を代表する寺院です。美しい散り椿や、数々の貴重な文化財、そして静寂な境内は、訪れる人々にやすらぎと感動を与えてくれます。奈良を訪れた際には、ぜひ足を運んでみてください。

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