似島学園

似島学園の概要

似島学園は、広島県広島市南区の似島に位置する社会福祉法人です。養護施設と知的障害者施設が併設されており、広島市立似島学園小学校・中学校と似島学園高等養護部が学園内に設置されています。

1945年8月6日、広島市への原子爆弾投下により、多くの人々が家族を失い、街には戦災孤児や浮浪児があふれていました。そうした状況の中、教育者である森芳麿が、これらの子供たちを引き取り、翌1946年9月3日に広島湾の似島に保護収容施設を開設したのが、似島学園の始まりです。

施設の開設にあたり、森芳麿は広島県や広島市に強く働きかけ、島の北東部にある旧陸軍施設跡地を借り受けました。職員と子供たちの手によって山林を切り開き、施設が作られました。この場所は、かつて1895年6月1日に開設された似島第一検疫所の跡地でもあります。

創立当初の正式名称は、広島県戦災児教育所似島学園でした。同敷地内には、広島市立似島国民学校分教場も併設され、学園生活（福祉）と学校生活（教育）の一体化が目指されました。

戦後の厳しい社会状況の中、学園では養豚、養鶏、カキの養殖などをしながら自活しました。1948年には、児童福祉法に基づく児童養護施設として認可され、1952年に社会福祉法人似島学園と改称されました。1966年には知的障害者施設高等養護部が併設されました。また、敷地内にあった似島国民学校も、1950年に広島市立似島学園小・中学校として独立し、現在に至っています。開園以来、3000人を超える子供たちが保護され、現在も120人以上の児童や青少年が在園しています。

長年にわたる児童福祉への貢献が評価され、2002年には第11回ペスタロッチー教育賞が、2007年には戦後設立された施設として初めて石井十次賞が贈られました。

学園の創設者である森芳麿は、日本サッカー協会特別顧問・森健兒氏、元サッカー日本代表監督・森孝慈氏の実父です。森芳麿は戦時中、日本体育協会の職員として広島市内に勤務していましたが、原爆投下の直前に東京へ転勤となり、被爆を免れました。このことから「生かされた命を、身寄りのない原爆孤児に捧げる」と決意し、似島学園を設立しました。しかし、1956年に公金流用の疑いで勾留されたことを恥じ、釈放後、「公職の立場にあって子供たちに申し訳ない」と自ら命を絶ちました。

似島学園は、戦後の混乱期に原爆で孤児となった子供たちのために設立され、今日まで多くの子供たちの成長を支えてきた施設です。教育と福祉が一体となった運営が特徴で、児童養護施設と知的障害者施設が併設されている点も、他の施設にはあまり見られない特徴と言えるでしょう。

現在も、多くの児童や青少年が在園し、職員一同、子供たちの健やかな成長を支えるために、日々努力を重ねています。

参考資料

社会福祉法人 似島学園
広島市立似島学園小・中学校
ペスタロッチー教育賞受賞者
石井十次賞贈呈式で似島学園
広島県大百科事典、中国新聞社、1982年10月
日刊ゲンダイ、連載「いま沈黙を破る 日本サッカー協会特別顧問 森健兒」、2007年4月19日

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