低分子量ヘパリン

低分子量ヘパリン (LMWH) の概要

低分子量ヘパリン（LMWH）は、血栓症の予防や治療に用いられる抗凝固薬の一つです。心筋梗塞や静脈血栓塞栓症の治療において重要な役割を果たします。LMWHは、天然に存在する多糖類であるヘパリンを基にした医薬品であり、血液の凝固を抑える効果があります。

ヘパリンとは？

ヘパリンは、主に豚の腸や牛の肺から抽出された天然物で、異なる長さの分子鎖から構成されています。医薬品用に製造されるヘパリンは、分子量が約5,000Daから40,000Da以上と幅広く、その中から低分子量に特化したLMWHは、平均分子量が8,000Da未満で、構造の変化が見られます。LMWHは高分子ヘパリンを分解することで得られます。

未分画ヘパリンとの比較

未分画ヘパリン（UFH）との違いは以下の点にあります：

• - 分子量: LMWHの平均分子量は約4.5kDaで、UFHの約15kDaに比べて小さいです。
• - 投与方法: LMWHは、術後静脈血栓塞栓症の予防において、UFHよりも投与回数が少なくて済みます。
• - モニタリングの必要性: LMWHは、UFHのように凝固パラメータのモニタリングが不要です。
• - 副作用リスク: LMWHは、出血や骨粗鬆症などのリスクが低いとされています。

使用上の注意

LMWHの使用は、特定の条件下で禁忌となります。アレルギー反応や過去にヘパリン誘発性血小板減少症を発症した患者、急性出血がある場合は使用を避けます。また、腎不全患者では使用時に生物学的半減期が延長し、注意が必要です。

副作用について

LMWHの副作用としては、出血が最も一般的で、重篤なアレルギー反応や注射部位の反応、肝酵素の上昇が報告されています。特に、ヘパリン起因性血小板減少症（HIT）は、非免疫性の可逆型（I型）と免疫介在型（II型）に分かれ、高リスクの患者では特に監視が必要です。

解毒薬と作用機序

LMWHの効果を中和するためには、プロタミンが用いられます。ただし、プロタミンはLMWHの抗第Xa因子活性を完全には中和しないため、注意が必要です。LMWHは、アンチトロンビンに結合することで血液凝固を抑制しますが、トロンビンに対する作用は弱いです。

製造プロセス

LMWHの製造にはさまざまな化学的及び酵素的手法が用いられます。具体的には、過酸化水素による酸化的解重合や、ヘパリナーゼによるβ-脱離開裂などがあります。これにより、低分子としての特性を持つヘパリンが作られます。

まとめ

低分子量ヘパリンは、その構造および働きが未分画ヘパリンと異なり、臨床的に非常に重要な役割を持っています。適切な使用と管理によって、患者への安全で効果的な治療法を提供することが可能です。医療従事者はそれぞれのLMWHの特性を理解し、使用にあたり慎重を期す必要があります。

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