佐々城豊寿

佐々城豊寿（ささき とよじゅ）

佐々城豊寿（1853年5月6日 - 1901年6月15日）は、明治時代の日本の女権運動家です。旧仙台藩の重臣・星雄記の五女として生まれ、幼名は艶（つや）と名付けられました。姪には、作家の相馬黒光がいます。

生涯

戊辰戦争後、旧徳川方の士族の中には、新政府への忠誠を潔しとせず、欧米のキリスト教団からの経済的支援を期待してキリスト教に改宗する者が少なくありませんでした。星雄記もその一人で、娘の艶（後の豊寿）を東京へ遊学させることを決意します。1869年（明治2年）、艶は男装して上京し、中村正直が創設した私塾・同人社女学校で漢学を学びました。その後、メアリー・キダーが設立した塾（後のフェリス女学院）に一期生として入学。さらに、一橋女学校（女子高等師範学校の前身）で教鞭を執りました。

医師で伊東家の婿であった伊東友賢と恋愛関係になり、女子のぶ、あい、男子の佑をもうけました。その後、友賢は伊東家を離縁し、佐々城家の戸籍に入籍しました。

女子参政権運動

1887年（明治20年）には、「積年の習慣を破るべし」という論文を『女学雑誌』に発表し、既成概念にとらわれず、女性が社会に進出していくべきだと主張しました。また、矢嶋楫子らとともに東京婦人矯風会を結成し、書記に就任。廃娼運動や禁酒運動などの社会運動に取り組みました。1889年（明治22年）には、婦人白標倶楽部を結成し、女子参政権を求める運動を展開しました。

1895年（明治28年）、自宅に日清戦争の従軍記者を招いた際、その中に国木田独歩がいました。独歩は豊寿の長女・信子に恋をし、両親の反対を押し切って結婚しますが、独歩の貧困が原因で翌年離婚。信子は翌年、独歩の子・浦子を出産しました。このスキャンダルが原因で、豊寿は公的生活から引退せざるを得なくなりました。

佐々城豊寿は、明治時代の黎明期に、女性の権利獲得のために奔走した先駆者の一人として、その功績は高く評価されています。

参考文献

神崎清『日本近代青春史』書物展望社、1941年
佐々城豊壽（著）、笹淵友一（編）「積年の習慣を破るべし」『女學雜誌・文學界集』第32号、筑摩書房、1973年
千野陽一『近代日本婦人教育史』ドメス出版、1979年
宇津恭子「才藻より、より深き魂に : 相馬黒光・若き日の遍歴」、日本YMCA同盟出版部、1983年
春田国男『日本国会事始』日本評論社、1987年
関口すみ子『近代日本公娼制の政治過程 :「新しい男」をめぐる攻防・佐々城豊寿・岸田俊子・山川菊栄』白澤社, 現代書館 (発売)、2016年

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