佐々木竹見

佐々木竹見：地方競馬の鉄人、その生涯と功績

佐々木竹見氏は、1941年青森県生まれの元騎手であり、地方競馬の歴史にその名を刻んだ伝説的な人物です。愛称は「鉄人」「川崎の鉄人」。42年に渡る騎手生活で、類まれな勝利数を挙げ、数々の記録を打ち立てました。その輝かしい経歴と、人となり、そして引退後の活動まで、詳細に見ていきましょう。

青年から川崎競馬場へ

佐々木氏は、偶然の出会いをきっかけに騎手の道を歩み始めます。青森県で友人と歩いている最中、日本画家の上泉華陽氏に見出されたのです。上泉氏は馬の絵を描くことで知られ、その兄が青野四郎氏（川崎競馬場の調教師）と面識があり、体格の良い若者を捜していたという幸運な巡り合わせでした。中学校卒業と同時に川崎競馬場の青野四郎厩舎に入門、騎手としての道を歩み始めます。八王子の騎手養成所を経て、1960年6月にデビューしました。

圧倒的な勝利数と数々の記録

デビュー当初から、佐々木氏は「竹見マジック」と呼ばれる独自の逃げ先行戦法で頭角を現します。デビュー2年目には165勝を記録、その後も数々の落馬事故を乗り越え、地方競馬界の頂点に立ち続けました。1964年には南関東リーディングジョッキーに輝き、1969年には須田茂氏の記録を更新する通算2896勝を達成します。

特に注目すべきは、1966年に記録した年間505勝（2384戦）という驚異的な数字です。これは当時の世界記録であり、40年間もの間日本記録として君臨しました。地方競馬のみの記録としては、現在も破られていません。さらに、1965年から1967年にかけては、史上初の3年連続400勝突破という偉業も成し遂げています。

42年間の軌跡と華々しい引退

2000年11月に現役引退を表明した佐々木氏でしたが、ファンへの感謝を込めて「佐々木竹見騎手ラストランシリーズ」と銘打った全国各地での騎乗を発表しました。そして2001年7月8日、川崎競馬場での最終レースを最後に現役を引退しました。地方競馬での通算成績は39060戦7151勝（重賞143勝）という驚異的なものであり、長らく地方・中央競馬通じての最多勝記録として君臨しました。南関東リーディングジョッキーも17度獲得しています。その功績を称え、佐々木氏の勝負服（赤・黄山形一文字）は永久保存となっています。

引退後も続く競馬界への貢献

引退後は、栃木県那須塩原市の地方競馬教養センター参与として後進の育成に尽力しました。2012年3月に勇退するまで、騎手養成コースの講師として技術指導にあたりました。引退後も、オーストラリア・フレミントン競馬場での国際ジョッキーOB戦「レジェンドレース」に招待されたり、「ジョッキーマスターズ」に参戦するなど、精力的に活動していました。川崎競馬場では、佐々木氏の功績を称え「佐々木竹見カップ・ジョッキーズグランプリ」が開催され、「佐々木竹見が選ぶベストジョッキー」も選出されています。

ストイックな生活と人柄

佐々木氏は現役時代、ストイックなまでの体調管理で知られていました。知人と食事に出かけても、午後8時には「明日の調教があるので」と帰ってしまうほどでした。努力家としても有名で、園田競馬場の重賞レースに臨む際には、前日の夜、雨上がりの馬場を裸足で歩き、馬場の状態を確かめたという逸話も残っています。一方で、ヘビースモーカーでもあり、毎日3箱以上のタバコを吸っていたと語っています。引退後は、ファンイベントで積極的にファンと交流し、親しみやすい人柄でも知られています。

数々の受賞歴

佐々木氏は、その功績から数々の賞を受賞しています。主な受賞歴としては、農林水産大臣賞、NARグランプリ優秀騎手賞、フェアプレー賞、神奈川県知事賞、日本プロスポーツ大賞功労者賞、スポーツ功労者文部科学大臣顕彰などがあります。これらの賞は、佐々木氏の地方競馬への多大なる貢献を物語っています。

まとめ

佐々木竹見氏は、地方競馬の歴史に燦然と輝く、まさに「鉄人」でした。その類まれな勝利数、数々の記録、そしてストイックな姿勢、そして温かい人柄は、後世に語り継がれるべき偉大な遺産と言えるでしょう。地方競馬ファンのみならず、多くのスポーツファンの記憶に深く刻まれた、偉大な騎手の生涯でした。

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