佐伯守

佐伯守（1942年 - ）は、日本の哲学者・法学者であり、法哲学を専門としていました。愛媛県松山市で生まれ、東洋大学大学院博士課程を単位取得満期退学後、毎日新聞社での嘱託勤務を経て、横浜国立大学講師、琉球大学教育学部助教授を歴任しました。1989年には松山大学法学部の教授に就任し、2013年に退職されました。

研究分野と業績

佐伯守の研究は、哲学、倫理学、そして法哲学といった広範な領域に及んでいます。特に、現象学的な人間理解や実存論、ニーチェ哲学など、多様な思想潮流を渉猟し、独自の哲学を展開しました。著書からは、現代哲学の人間論的素描から、経験の解釈学、人間性の解釈学、そして法思想まで、その探求の射程の広さが窺えます。

著作

佐伯守は、数多くの著作を通じて、その思想を世に問いました。以下に代表的な著作を挙げます。

『体験と精神 現代哲学の人間論的素描』公論社 1977
『経験の解釈学 物・世界・人間の関係論』現代書館 1979
『人間性の解釈学 理性・イマージュ・狂気』現代書館 1981
『実存論 現象学的人間理解の試み』高文堂出版社 1982
『認識の地平 ニーチェを読む』高文堂新書 1982
『生きることの哲学 人間存在の現象学』高文堂出版社 1986
『生活世界の現象学』世界書院 1986
『<法の思想>を読む』晃洋書房 1993
『自己と経験 森有正の世界から』晃洋書房 1994
『知の思想を読む』知碩書院 松山大学研究叢書 1998
『<場所的>ということ ドゥルーズ/西田幾多郎を読む』晃洋書房 1999
『<知>のオントロギー 現代思想の構図』萌書房 2000
『法と人間存在 ケルゼン法学とポスト・モダン』萌書房 松山大学研究叢書 2005
『哲学のパロール 西田幾多郎/廣松渉/丸山圭三郎』萌書房 松山大学研究叢書 2007

これらの著作は、佐伯守の思想の変遷と深化を示すものであり、それぞれの時代における哲学的な問題意識と、それに対する独自の応答が込められています。

翻訳

佐伯守は、翻訳家としても貢献しました。特に、歴史主義や歴史哲学に関する重要な文献を翻訳し、日本の思想界に紹介しました。

K.ホイシー『歴史主義の危機』イザラ書房 1974
エクハルト・レッシング『トレルチの思想 その歴史哲学をめぐって』日本YMCA同盟出版部 1976
リッカート『歴史哲学序説』ミネルヴァ書房 1976
ガーダマー,フォーグラー編『講座現代の人間学 4 (歴史理論と人間像)』谷口健治、森田孝,田村一郎,田中真造共訳 白水社 1979

これらの翻訳は、佐伯守の学問的関心の広さを示すとともに、海外の思想を日本に紹介し、日本の哲学研究の発展に寄与しました。

佐伯守は、教育者として、また研究者として、日本の哲学・法学の発展に大きく貢献しました。彼の著作と思想は、今後も多くの人々に読み継がれ、新たな思想的展開の触媒となるでしょう。

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